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□ユニバース
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この手は何の為にある?
誰かを引き止める為だ。
「誰か」を、「こちら側」へ引き戻す為。
今、少なくとも僕の手は、ただ一つその為にある。
帰ってこい、「望月綾時」。
この手の中に。
滅びがなんだ。
そんなもの関係ない。
伸ばす手があるなら、この手を取れ。
お前に僅かでもその意思があるのなら。

滅びを「こちら側」で見たって、悪くはないだろう?



「君は、本当に嘘つきだね」

滅ぼさせるつもりなんて欠片もないくせに、どこまでも優しく、卑怯な言葉でもって、僕を揺らがせる。
それもいいかもしれない、と思わせる。

それはとても残酷な結末をもたらすと分かっているのに。

溶けて一つとなった「母」の中から「僕」を「生み出して」しまう。
「手」を「生み出して」しまう。
「手」を「生み出さなければ」と僕に思わせてしまう。

あぁ、本当に君は。

なんて愛しい、僕の半身。

やっぱり僕は。

君の心の海から生まれたんだ。
 

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