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□壁に追いつめてみた@
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「和さんを壁に追い詰めてみたら早速こちらを睨みつけてきたので、『そんなに警戒しなくても』と言ったら『じゃあ退いて』と言われた。どうしようかな。」というTwitterの診断結果に乗っかってみました。

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In 日織宅。

「そんなに警戒しなくても」
「じゃあ退いて」
彼は自分の影の下で、唇を尖らせて拗ねたようにこちらを見上げてくる。
退けと言われたら素直に退くつもりだったが、自分に対しては強気に振舞う彼が面白くて、つい調子に乗ってしまう。
「和さん、いつまたこんな風に犯人に追い詰められたりするとも分からねえんですから、俺相手に練習してみるのもいいんじゃねえかと思うんですけどねえ」
「ない!ないったらない!絶対ない!そんな目に遭うようなとこなんか、絶対行かないから!」
「またまた、そんなこと言ったって和さん自宅に居ても事件を引き寄せちまう体質でしょう?いい加減あきらめたほうがいいと思いやすぜ?」
「う…」
「それに俺と出かけるんでなくたって、和さん、大学の友達からの誘いだってそうそう断れやしねえでしょ」
「うう…」
「何かに巻き込まれたときに俺がいっしょにいるたぁ限らねえんですから、そういうときのためにやっぱ逃げる方法ぐれえは覚えといてもらわねえと」
「………だ」
「…和さん?」
「そんなことしなきゃいけない状況になるのなんてやだあああぁぁぁぁ……!」

※背を向けて耳を塞いで泣き出しちゃったのでやめました。

そして。↓

「悪かったですって和さん」
つーん。
「ほんの冗談のつもりだったんですって」
つーん。
とりつくしまもないとはこのことである。
さすがに、一旦言葉を継ぐのを止めた。
しかし、こういう時どうすれば彼が話を聞いてくれるか、自分は知っている。
こちらも背を向け、しばらく沈黙したところで、ぽつりと言葉をこぼした。
「…俺としちゃ、逃げる方法ぐれえ覚えてて欲しいっていうのは冗談じゃなく本心なんですけどね…あんたすぐに危ない橋渡るし…」
「日織…」
そうすれば彼があっさりと不機嫌の壁を崩すことを狙って、しおらしく振舞ってみせる。
「怖がらせちまってすいやせんでしたね…もう言いませんから」
「あ…」
「今日泊まっていくでしょう?晩飯、作ってきますね」
「日織っ…」
「和さん?」
「あの…その…ごめん」
ぱちくり。
思わず吹き出すように笑みがこぼれた。
「なんであんたが謝るんですかい。悪いことしたのは俺でしょうに」
「だって、そういつも日織に甘えてばっかりいられないのはほんとだし…」
「欲を言えば、俺としちゃなるたけ傍にいたいとは思ってますがね」
「日織…。…うん、やっぱり、ごめん」
「何言っても結局謝っちまうんだなあ、あんたは…」
「ご飯の支度するんだろ?僕も手伝うよ」
「敵いやせんねえ…やっぱ悪いことできねえな、あんたには」
うまいように動かそうと画策したところで、小細工を弄したこちらが、結局いつも負けるのだ。
「?」
「ははっ、なんでもねえです。それより、和さん何か食べたいものありやすかい?」
「うーん、日織の料理って何でも美味しいからなあ…」
「ほめたって何も出やせんぜ」
「そんなんじゃないってばー」

どう転んでも結局和さんに負けてしまう日織でした。
 

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