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□狸寝入り
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カーテンの前を通る影。

向こうは俺が寝ていると思っているだろうけれど、実はときどき、こうしてこっそりと起きている。

かつんかつんと響く足音。
椅子を引く音。
ぱらり、ぱらりと書類をめくる音。
かりかりとボールペンを走らせる音。
たまにするあくび。
ときに何かに失敗して出る小さな声。
そして薄青いカーテンを横切る影。

時折吹き出しそうになったり、声をかけそうになったりするけれど、息を潜めて同じ空間にいることを味わう。
気持ちなんて伝えてない。
自分は大概のことは難しく考えずに出来ると思っていた。
でも出来ていない。
あいつの顔を見るたびに飲み込んでしまう。
気持ちを抱えながら同じ空間にいるのは、じりじりとしたもどかしさを覚えるけれど、一緒にいられるというのは、心地良いときでもある。

俺がこんなことを考えながら狸寝入りをしていることを、あいつは知らない。
 

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