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□保健体育で先生が授業をやりました。A
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授業の後保健室へ来ると、派出須がうんうんと唸っていた。
「なんだよついに生まれるのか?」
「ラマーズ法?!違うよ!それに僕男だよ?!」
「まぁまだしてもねーしな」
「しっ、「して」っ…?!」
「んで、じゃなかったら何うんうん言ってんだよ」
「今物凄いこと言ってたけど聞かなかったことにしておくよ…。うん、えっと実は…いや…、やっぱり…これはプライベートなことだから」
言い掛けて、くるりとこちらへ背を向ける。
その拍子に、白衣の袖が引っ掛けたのか、一枚のA4用紙がデスクの上から藤の足元へとするりと滑り落ちた。
「なんだ?…あぁ、安田の答案か」
「あっ、覗いちゃだめだよ!」
時既に遅し。
拾い上げた答案用紙を藤はつまらなそうに一瞥した。
「あいつ保健体育だけは抜かりねーな…」
「もう…」
呆れたようにため息をつく派出須に、答案を片手に藤が問い掛けてくる。
「…で?これがどうかしたのか?」
「あ…ええと、その、テストの最後のほうにね…」
「最後?」
言われて、藤はぴらりと答案を裏向けた。
「「先生は大人の経験が」…あるんですかってコメントが…」
そこには確かに無駄にエネルギーに溢れている安田の字があった。
派出須が困った表情で、肩を落として盛大にため息をつく。
「…はーん?」
それを聞いて心得たとばかりに藤はニヤリと笑った。
「…弱ったなぁ」
「じゃ今すりゃいいじゃん」
いつの間にか至近距離にいた藤が派出須の顔を覗き込んだ。
「……え?」


アッ――



両手で顔を覆って、しくしくと派出須が訴える。
「藤くん…僕は別に経験がないことに対して弱ってたんじゃなくてね…安田くんにどう答えたらいいものかなぁってことを悩んでたんだよ…」


ちなみに安田の保体テストの成績は、内容的には100点でしたが、ほとばしるパッションによる誤字脱字のせいで88点という結果に終わりました。

安田への先生のコメント。
「もう少し落ち着いて書けば100点でした。残念です。
安田くんなら心配しなくてもそのうち素敵な人が現れるよ。
だからそのときには、間違っても相手の人を泣かせないようにね。  派出須」
 

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