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□好きなこと(派出須side)
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日誌、保健だより、養護教諭が付き添う必要のある行事の書類や薬品などの物品注文…それらが終わって、まだお昼までに時間があるとき、ソファでお茶を飲んでゆっくりするのが好きだ。
勿論、生徒の皆が来てくれるのが一番嬉しいけれど。

お茶を一口飲んで、ほうと息をつく。
「(…あ、そういえば新しいお茶菓子…忘れないうちに出しておかないと)」
カップをテーブルに置いて、身を起こそうとしたところで、後ろからふわりと抱き締められた。
「!」
丁度カップを置いたところで良かった。
持ったままだったら、驚いた拍子にこぼしたかもしれない。
「びっくりした」
それと同時に藤くんだと分かって、ほっとしたのとおかしさとで笑みがもれる。
「寝てると思ってた」
見慣れた薄茶色の髪が、ぱらりと視界に入った。
「あんたの頭が見えたから」
頭の上に顎を乗せたまま喋られるとくすぐったい。
「藤くんこうするの好きだよね」
そう言って見上げてみる。
僕がソファに座っているとき、藤くんはよくこうして頭を乗せてくる。
「あんたの頭の上に立つなんて、なかなか無いし」
「そっか」
藤くんでも身長を気にしたりするのかな。
なんだかそんなところは普通の中学2年生の男の子なんだなぁと思えて、微笑ましくなる。
そんなことを言ったら「子ども扱いするな」って拗ねるだろうから、本人には絶対言わないけれど。
でも、この体勢はそんな藤くんが甘えてくれているみたいで、ちょっと嬉しい。
まるで猫がじゃれているみたいだ。
「(猫…)」
日なたぼっこばかりする猫を想像したら、微笑ましくて思わず笑ってしまった。
藤くんは猫なら、本当に猫らしい猫だろうなぁと思う。
「(…なんだか眠くなってきたかも)」
首や肩に体温を感じられて心地よくて、こうされるといつも眠くなってくる。
そろそろお昼だ。
でもチャイムが鳴るまでにはまだ少し時間がある。
それまでには藤くんはきっとまた別のことを始めるだろうけれど、

藤くんの気が変わるまで、

しばらく、このままで。
 

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