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□好きなこと(藤side)
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普段アイツは机に向かって日誌や保健だよりを書いたり、行事関係の書類を作ったりしているが、たまにソファに座ってお茶を手にほっこりと寛いでいる。
今日も仕切りから覗くソファの向こうに、灰色のふわりとした頭が見えた。
「…」
音を立てないようにジャンプを置いて、そっとベッドから床へ足を下ろす。
そして静かにハデスの背後に近付き、カップを持っていないのを確認して後ろから抱き締めた。
以前持っているところに同じことをして危うく2人揃って火傷をしかけたことがあるからだ。
「びっくりした」
回した腕に触れ、ハデスが笑う。
「寝てると思ってた」
「あんたの頭が見えたから」
頭の上に顎を乗せたまま喋ると、くすくすとした笑いに、その頭が揺れた。
「藤くんこうするの好きだよね」
そう言って見上げてくる。
自分とは違う洗髪料の香りに柔らかな感触。
頭を抱いているから、腕だけじゃなく首でも感じられる体温。
「あんたの頭の上に立つなんて、なかなか無いし」
気恥ずかしくて、思っていることとは別のことを言う。
それをどう思ったのか、ハデスは、そっか、と呟いてくすりと笑った。
実際まだ背は全然追いつかない。
けれど、成長期になればハデスと釣り合う程度には伸びるはずだ。
そう思っているからそんなに気にしてはいないのだが、微笑ましそうにしている辺り、子どもっぽく見られたような気がして、なんだか少し面白くない。

だから、

「眠くなるぐらい落ち着くから」

だなんて、

まだしばらく言ってやらない。
 

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