保健室の死神

□落花生A
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ぱきり、ぱきり。

静かな部屋に響く、乾いた音。
先ほどからのんびりと、近所に住むお年寄りからお裾分けしてもらったという落花生を、サイドテーブルに新聞紙を広げて派出須がぱきりぱきりと嬉しそうに割っている。
藤はと言えば、買ってきたジャンプをかいた胡座に乗せたまま、むすっとした顔で派出須の横顔へと視線を注いでいた。
「…」
ぱきり、とまた一つ、落花生の殻が割れて屑が落ちる。
楽しげに割る派出須は藤の不満げな様子には気付かないようで。
派出須がその中身を皿に一粒置いたところで、藤は我慢ならなくなって、その肩をぐいと引いてそのまま床に押し倒した。
「…藤く、っん……?」
冬用の厚いカーペットを背に敷いて、きょとんとした目で見上げてくる派出須には応えず唇を塞ぐ。
両の手首を押さえて、吸い付くように唇を重ね、逃げたがる舌を追った。
「ふ…っ、んっ…」
最初はびくりと震えて引っ込むものの、やがて向こうからもそろそろと差し出してくる。
「んんッ…ぁ」
それを捕まえて、根元からなぞり、藤は執拗に自身のそれと交わらせた。
たっぷりとそうして、ようやく派出須を解放する。
「っ…はぁ…っ…、もー…」
唐突な行動に物申したげな声を上げ、ため息をつく派出須に、藤は意地の悪い笑みを浮かべた。
「あんたが悪いんだよ。ずっと落花生ばっか剥いてっから」
ちらと、派出須の手元に転がった落花生を見やる。
「落花生にやきもち?」
「あんたが焦らすからだっての」
「そんなつもりはないんだけど」
「なお悪い」
そう言って再び唇を塞ぐ。
ただ、先ほどのように深いものではなく、じゃれるように。
「(藤くんは僕が落花生ばっかりって言うけど、藤くんもこういうことばっかりするんだもんなぁ…)」
「何考えてんの」
「うん?あー…僕も藤くんも大差ないなぁって」
「何だそれ」
「ないしょ」
くすりと笑って、今度は派出須のほうから藤の唇に口付けた。
 

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