思い出のファイル

□エイプリルフール
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二人を宥めて琴音が一息ついた後、麻衣がやってきた。
そしてぼーさんや綾子、ジョンに真砂子といったお馴染みメンバーも不思議と集まった。

暫くお茶をして談笑していた琴音は嫌がるナルやリンも引っ張り出してきた。

「いったいなんなんだ」

「実は重大発表があるの」

そう切り出した琴音は前に出ると皆を見た。

「実は私…………………人間じゃないの」

「「「「「「「は?」」」」」」」

ぽかんとした表情をするメンバーに琴音は続ける。

「私………妖怪なんだ」

俯いた琴音からの突然の告白に沈黙が降りる中、麻衣が琴音に近寄った。

「本当なの……?琴音」

「うん。皆に黙ってるのはできなくて。……私の本当の姿はね……猫又なの。変化すると私…【猫又になっちゃうんだ】」

そう言った琴音の姿は普通の猫よりも大きい姿……くるくるの淡い茶色の毛並みに碧色の瞳を持つ尾が二本の猫又の姿になった。

「おいおい……マジかよ」

「嘘………」

「ほんまだったんですか……」

ぼーさん、綾子、ジョンが目を丸くして猫又姿となった琴音を見た。

「琴音……。でもあたくしはたとえ琴音が妖怪でも構いませんわ。琴音があたくしの親友ということに変わりありませんもの」

真砂子はきっぱりとそう言い、琴音を抱き上げた。

「それに琴音、とっても可愛らしいですわ」

「真砂子……ありがとう」

声はそのままで、琴音は尻尾を振った。

「あたしだってそうだからね!琴音が妖怪だからって怖がったり嫌ったりしないんだから。琴音は琴音だよ」

麻衣もそう言って琴音の頭を撫でた。
それから「俺も」「アタシも」「ボクもです」と琴音に変わらぬ態度で接した。

そんな中、ナルだけは琴音をじっと見ていた。

「ナル……?ナルは、嫌?妖怪の私なんか」

「いや……。僕は琴音が何者であろうと気にしない。麻衣の言う通り、琴音は琴音だしな」

そう答えたナルに琴音は笑った。しかし内心では

「(ふっふっふ、ナルも意外とちょろいな)」

と思惑通りになってほくそ笑んでいた。

「……とでも言えば満足か?」

「え?」

ナルが口端を吊り上げて凄絶に笑った。それにゾクリと寒気がした琴音。

「僕がそんな嘘に引っかかるとでも?そこの人達と一緒にしないでもらおうか」

それには皆カチンときて、どういうことだとナルに詰め寄った。

「まだ気づかないのか?今日は何日だ?」

「えーっと……今日は4月1日だけど、それが何?」

麻衣が首を傾げれば、ナルは「まだわからないのか」と溜め息をついた。

「4月1日…4月1日………ああーーっ!!」

唸っていたぼーさんが突然声を上げた。

「エイプリルフールだ!」

それに皆がああ!と納得して一斉に琴音を見た。

「ちぇ、やっぱナルを騙すのは無理だったか〜。いけると思ったんだけどなぁ」

残念そうに溜め息をついた琴音は「んじゃ【戻ろ】」と言って元の姿に戻った。

「みんなごめんね?嘘なんかついて。私は正真正銘人間で、妖怪なんかじゃないから」

へらりと笑った琴音に皆の非難めいた悲鳴が轟いた。

「もう!琴音のバカっ。本気にしちゃったじゃない!」

「本当ですわ。あんな嘘をつくなんて……」

「まーったくだぜ。あーあ、騙された」

怒る麻衣と真砂子に、一気に脱力したかのようにソファーに座ったぼーさん。

「でもナル、よく嘘だってわかったわね」

「琴音は嘘をつくのが下手だからな。嘘をつく時、琴音は必ず目線を右下に移す」

あっさりと答えたナルに当の本人である琴音は目を丸くした。

「そうなんだ……。私、知らなかった」

「よく見てはるんですね」

ジョンは感心したように頷いていた。リンもナルを少し驚いたように見ていた。

「つい悪戯心で……。ごめんなさい!」

謝った琴音にみんなは仕方ないというように笑って許した。










嘘もほどほどに。琴音はそう痛感した。








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