思い出のファイル

□エイプリルフール
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さて、お次はSPR。

「おっはよ〜!」

カランとベルが鳴り、元気よく挨拶した琴音は中に入った。

「ナル〜?リンさ〜ん?いますか〜?」

麻衣の姿はなく、琴音は所長室に向かった。

「ナル〜、返事くらいしてよ〜」

「琴音か……聞こえなかった」

本を読んでいたナルはちらりと顔を上げてそう返した。
本読んでたらそら気づかないわな、と琴音は内心そう呟いた。

「何かすることある?」

「いや……特にはない。好きにしてていい」

そう言ってまた読書に集中しだしたナル。琴音はつまらなさそうにしながら部屋を出た。

「何してよっかな〜」

《主、なら麻衣が来るまで面白い事をしようか?》

白夜がそう言って尻尾を振り、ニヤリと笑った。

《例えば……こんなのはどうだ?》

どろん、と煙に包まれた白夜はリンに化けた。

「おおー!すごいすごい!」

歓声を上げた琴音に気をよくしたのか、白夜は次々に変化した。
SPRメンバー全員に変化した後は他の動物に化けた。

「流石白夜!狐は変化が得意だね」

《主!私だって変化することぐらいできますよ!》

朱夏が羽をバサバサ広げて主張した。

《見ててくださいよ。……ほら!》

そう言って朱夏が化けたのは猫又だった。しかしその色は朱色。
別のものに化けても色はやっぱり朱色だった。

「色はそのまんまなの?」

《うぅぅ〜〜。無理みたいです。私……実は変化とかちょっと……苦手で…》

《ふん、変化で狐の右に出る者はいないさ》

自慢げに言った白夜に朱夏は悔しそうに唸った。

「(あ、そうだ)ねぇ二人とも、私……ずっと言いたかったんだけどね、私……白夜と朱夏のこと、嫌いよ」

《《 !? 》》

琴音の言った言葉に白夜と朱夏は固まった。

《な……な、んで……》

《そん、な……》

呆然としたように瞠目したと思えば、次の瞬間ボロボロと涙を流し始めた。

それにびっくりしたのは琴音だ。慌てて説明しようと思ったが、その前に朱夏に泣きつかれた。

《主!私が何かしましたか!?主に嫌われるほどの失態をしてしまったでしょうか!?何がいけなかったのですか!?謝りますから許してください!お願い、です……っ、嫌わないで…くださいっ!!》

《俺も!悪い所があれば治すから!だから…嫌わ、ないで……》

朱夏はともかく白夜まで泣き出したことに琴音は慌てて二人を抱き上げた。

「嘘!嘘だから!ほ、ほら今日は4月1日!エイプリルフールだよ!だから今言ったのは嘘だからね。二人を嫌うわけないから。大好きだから!」

《ぐすっ……本当…ですか?》

二人の涙を拭い、琴音は安心させるように微笑んだ。

「大好き、大好きだよ。白夜、朱夏……」

ようやく泣き止んだ二人は安心したように息をついた。

《よかった……。主に嫌われたら、俺……》

《世界が終わりますわ。主に嫌われたら、私は生きている資格がありません》

「(んな大袈裟な…)」

二人には嘘を言わないようにしようと思った琴音だった。







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