思い出のファイル

□新年の始まり
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「「「ただいまー」」」

ガラガラと引き戸を引いて中に入ると、新聞を読んで寛いでいた秀一が顔を上げた。

「おかえり。……何だ何だ?そのシラけた面はよォ」

若干一名のうなだれた姿に秀一は首を傾げた。

「おみくじが………」

「凶だったとか?たかがおみくじだろう?ンな落ち込むなよ」

琴音の額を弾いた秀一はやれやれと肩を竦め、「ありがちなこと書いた紙切れだ。気にするこたぁない」と言った。

「うん……」

『ほらほら皆さん、外は寒かったでしょう?水姫さんがぜんざいを作っていますからそれを食べましょう?』

玲治が言ったぜんざいという言葉に琴音はすぐに反応して目をキラキラさせた。

「ぜんざい!食べる食べる〜。水姫ー、私白玉多めねー!」

一気に暗い雰囲気を払拭させた琴音はパタパタと台所に駆けていく。

「琴音ったら、あんなにコロリと機嫌直しちゃって」

「流石水姫さんだね。もしかしたらこのことを見越してたのかもしれないよ」

「神様だから。有り得なくないな」

それぞれそう言うと、琴音が運んできたぜんざいのお椀を受け取ってほんわかと温まりながら食べるのだった。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







ぜんざいが食べ終わると今度は琴音が「正月にする遊びがみんなでやりたい」と言いだし、蔵から羽子板や独楽(コマ)、福笑いやかるたを出してきて片っ端からやり始めた。

「ほらみろジン!俺に独楽回しで勝てると思うなよ!」

袖を襷掛けして佇む秀一はいい大人のくせして独楽回しではしゃいでいた。

「俺は昔から独楽回しは誰にも負けたこたぁねーんだよ!」

『嘘を言っちゃいけませんよ。昔健太君に負けたことあったじゃないですか』

呆れたように言う玲治に秀一は「あの時はだなぁ…」と弁明しだし、ジンはそれを笑っていた。

「麻衣!どう?ちゃんとできてる?」

「あははっ!全然違うよ琴音〜。というかもう人の顔じゃないよそれー。あはははっ、笑えるー」

目隠しを外して福笑いの顔を見れば、顔のパーツがてんでんばらばらで、一部は顔から遠くに離れている。
それを大笑いする麻衣に、琴音もびっくりしながらも笑い出す。

《白夜!勝負です!貴方には負けません。私よりも先に主の式になった貴方を今日こそは負かします!》

《出会った差だといつも言ってるだろう。(水姫様には当たれないからって俺に当たるなよ)》

羽子板をビシッと突き付けた人型姿の朱夏は白夜に挑戦状を叩きつけた。
白夜も面倒臭いなと思いつつも、引き受けなかったら後々また煩いので仕方なく羽子板を手にする。

《覚悟っ!てやっ!》

《勝負事で負ける気は、ないん、だよっ!》

カン、カン、カン!と常人とは掛け離れたスピードでの羽根突きの応酬が繰り広げられる。

《まあまあ皆様楽しそうですこと。主、その次は我と一緒にかるたをしましょう》

「おもしろそうっ!!やろやろっ」

「あたしもするー」

「ジン!ほらもういっぺんだ!俺に勝ってみろ」

「いや、僕はもういいよ……」

『無理強いは駄目ですよ、秀一』

《朱夏スマーッシュ!》

《何なんだそれは……》

それぞれが楽しそうに騒ぎ、正月を満喫していたのだった───。








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