思い出のファイル
□出会いB
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麻衣Side
鈴宮さんが転入してから1週間が経った。最初、転入生に関心を持っていた生徒も、時が経てば次第に落ち着いていった。
隣の席に座る鈴宮さんを見ていて感じた最初の印象は“ふんわりとしてよく笑う人”だった。
彼女は相手の話しをよく聞くし、よく笑う。タレ目なのも相まって笑うと優しげで、穏やかな気持ちになれる。
だがそれが作り物めいて見えたのも確かだ。
(……って、これじゃああたしが鈴宮さんを観察してるストーカーみたいだね)
まぁ、鈴宮さんを見ていて(ここ重要。観察じゃないから)もうひとつわかったことは、“どこか冷めていて、目が笑っていない人”だった。
時々、ひどく冷めた、感情が全く篭っていない目をする。
それを初めて見た時、あたしはひやりとした何かが背中をすうっと伝うのを感じた。今思えば、得も言われぬ恐怖さえ感じていたのだろう。
鈴宮琴音とは、日だまりの優しさの中に底知れぬ恐ろしさを秘めた人間なのだろう。
普通の人とは違う何かを抱えた人間。笑顔を貼付けているように見えるのも、周りと距離を取っているように見えるのもきっとそのせいだろう。
(だけどあたしは……あたしは、鈴宮さんと仲良くなりたい。友達に、なりたい………!!)
その気持ちを抱いたのが何時かはわからないが、多分鈴宮さんのぎこちない微笑みを見たその時から、あたしは鈴宮さんと仲良くなりたいと思ったんだ。
鈴宮さんが周りと距離を取っていても、普通の人と違う何かを抱えていたとしても、あたしは鈴宮さんと友達になりたい。
鈴宮さんのことをもっとよく知りたい。そう強く思った。
(これからアタックしていかなくちゃ。いきなり「友達になって」なんて言っても困るだろうし、まずは仲良くなってからだよね)
そう決意したあたしは明日からの学校生活を思って一人楽しそうに笑った。
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