思い出のファイル

□一日遅れのクリスマス
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「じゃあ、プレゼントを渡したいと思いまーす!!」

料理をあらかた食べ終えた頃、琴音は注目と言うように声を上げた。

「じゃあ私からみんなに渡すよ〜」

上機嫌な琴音は紙袋を漁り、それぞれに手渡していく。

麻衣には淡いピンクの手袋、真砂子には着物にもあう藤色の肩掛け。
綾子には花をモチーフとした髪飾りにジョンは銀の十字架に水晶の丸石を連ねたロザリオ。
ぼーさんには木彫りの龍の置物を。ナルには灰色に藍色の模様が入ったマフラーを、リンに色違いで緑色の模様が入ったマフラーを渡した。

「ちなみに頑張って全部手作りにしてみました〜」

「すっごーい。あ、もしかして最近授業中にぐっすりだったのはこのせい?」

麻衣の指摘に琴音はゔっとつまり、目を逸らせた。

「寝る間も惜しんで作ってくださったのですね。嬉しいですわ、琴音」

「でもちゃーんと勉強もしなくちゃダメだぞー」

真砂子は嬉しさからか頬を少し赤らめ肩掛けを大事そうに抱いた。
ぼーさんはちょんちょんと琴音の額を小突いた。(ナルは『このナマケモノが。だから馬鹿なんだ』という目で見てきました。……グスン)

「喜んでもらえたのなら私も嬉しいよ」

「ありがとうございますです。大事に使わせてもらいます」

琴音からのプレゼントはなかなか好評で、ナルとリンも珍しくお礼をいって受け取ってくれた。

それから麻衣からは湯たんぽ、真砂子からは手袋、綾子からはアロマキャンドル、ぼーさんからはサンタの服を着た猫のぬいぐるみ、ジョンからはスノーマンのストラップをもらった。

「わー、みんなありがとう!!すっごく嬉しい!!」

「琴音が喜んでくれてあたしもよかったよ」

「選んだかいがありましたわ」

幸せそうな表情で笑う琴音に周りも満足そうだった。

「あ、そうだ麻衣。実はもう一つプレゼントがあるんだよね」

そう言って麻衣に渡したのは白い包装紙に包まれ、ピンクの可愛らしいリボンでラッピングされた一つの箱。


「それはね、麻衣に渡してほしいって頼まれたの」

「頼まれたって、誰に?」

首を傾げた麻衣に琴音はクスリと笑い、「麻衣もよく知る人だよ」とだけ答えた。

「あけてみたらどないでしょ?」

ジョンの言葉に麻衣は頷き、包みを開けていく。

「木箱……?」

それはちょうど両手に納まるほどの木箱で、蓋には2羽の小鳥が、側面には草木や花が彫られた美しい一品だった。

そして蓋を開けてみれば音楽流れ初め、蓋に彫られていたのと同じ小鳥が翼を広げたり閉じたりし、もう一匹は嘴を閉じたり開いたりしていた。

それはまるで楽しそうに語り合っているかのようだった。

「オルゴール……」

「へぇ、外も中もかなり繊細にできているじゃない。これはかなりの一品ね」

しげしげと眺めた綾子の言葉に周りも頷く。そして話はこの送り主のことになった。

「麻衣、何か心当たりないの?」

「う〜ん……。琴音、教えてくれない?」

「ダーメ。本名は明かさないでって約束なの」

「あ、なんや紙みたいなもんがは挟まってますけど」

「ホントだ。何々?……てこれ筆記体〜!?あたし筆記体は読めないよ〜」

流麗な字で書かれた内容に麻衣は呻いた。唯一、英語圏であるジョンだけが読むことができた。

「えっと……『メリークリスマス、麻衣。貴女にはまだ言えないことも、言いたいこともたくさんある。だからいつか、貴女とは本当の形で会いたい。夢は夢とは限らない。夢はどこにだって繋がっているのだから。夢が現実となる日まで、どうか───E.D』……て、書いてあります」

ジョンの日本語訳(イントネーションがちょとおかしかった)にみんなが暫し考え込む。

「E.D……って誰だ?」

「それよりも文のほうが何か意味ありげじゃない?」

「夢………」

夢という単語に反応した麻衣に琴音はパンパンと手を叩いて中断させる。

「今はまだ気にしなくていいよ。いつかきっと会えるから。今はまだ……ね?」

相手もまだ知られたくないんだよ、とそう言えば渋々ながらも周りは納得してくれた。

「さぁて、パーティを楽しもう!!お次はデザートだよ〜」

テーブルに並べたフルーツいっぱいのタルトに色とりどりのゼリー、クッキーなどにみんなの視線はそちらに向いた。

「わぁ〜、おいしそう〜」

目をキラキラさせて麻衣は真っ先にデザートに手を伸ばした。

「(ふっふ〜見事に話をそらせるのに成功〜)ささ、ナルとリンさんもデザートいかがですか〜?」

「いや、僕はいい。甘い物は苦手だと言っただろう?」

「私も結構です」

チッ、つれないなぁ〜と琴音が嘆息していると、ナルが掛けていたコートを掴んだ。

「あ、ちょっとナル、どこいくの?」

「外に。この空気とあいつらのテンションについていけない」

ちらり、と後ろを振り向けば確かにみんな浮かれていたりはしゃいだりしていた。それに琴音はクスリと笑った。








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