思い出のファイル

□お菓子はいかが?
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クッキーを食べ、飲み込んだナルの目がちょっと見開かれ、それを見た私は嬉しそうに微笑んだ。

「どう?」

「……紅茶のクッキーか」

ナルが言う通り、クッキーの生地に紅茶の粉末を混ぜて焼いたのだ。
食べたら紅茶の香りと味が広がるクッキー。

「ナル、紅茶好きでしょ?だからクッキーも紅茶と同じ味にしたら食べてくれるかなぁ〜って」

「……なるほどな。確かにこれなら甘くないし、紅茶とも合う」

そう言って紅茶を飲む姿は大変様になる。……悔しいほどに。
しかしそれ以前にまだ聞いていないことがあるのだが………。

「お味の感想は?」

「………。美味しい」

ナ、ナルがっ!!ちょっと聞きました奥さん!?(←誰だよ)あのナルが!!“あの”ナルが!!唯我独尊で毒舌で人を褒めたり労(ネギラ)ったりしそうにないナルが!!性格が悪くて態度も悪くて捻くれているあのナルが!!しつこく何度も言うようですがあのナルが!!すすすすす素直に「美味しい」と!!

「(え…、なんかクッキーにまずいもの入れたかな?ナルが素直……)え、あ……ありがとう」

「美味しい」は褒め言葉なので、目をパチクリさせながらもお礼を言う。

「紅茶も大分美味しくなった。琴音にしてはよくやった」

「(コイツだれぇええーー!?ナルじゃない!!絶対ナルじゃなーい!!)ど、どうも……ありがとう」

本当にクッキーにあたった?私のせいなの?クッキーどんどん食べてるよあのナルが!!

混乱と動揺の中、ナルは黙々とクッキーと紅茶を減らしていく。

けれど、「美味しい」と言ってもらえたのは嬉しい。食べてくれるのも嬉しい。

「えへへ。ナルのために作ったんだもん、喜んでくれたなら私も嬉しい」

本当に嬉しそうに笑う琴音には上機嫌に振る猫の尻尾が見えたとか。

「ふふっ。やっぱり、人が作ったものって美味しいでしょ?
そんで、作った人はその作ったものを食べてくれるのが一番嬉しくて幸せなんだ」

そう言えば、ナルは一言「そうなんだろうな」と呟いた。

「ねえ…、また作ったらさ、食べてくれる?」

「同じ味は飽きるから別のならな。紅茶もほかのやつをいれろ」

うわー、めっちゃ上から目線な言葉で命令じゃん。……確かにまだアールグレイしかいれたことないけどさ。(茶葉によっていれ方や蒸らし時間が違うとか何とか言ってたから………)

「頑張りますっ!!クッキーもイロイロ研究してみる」

ビシッと敬礼してそう言う琴音にナルも微かに微笑む。

「まあ、精々頑張れ」

最後に嫌味っぽく笑ったナルに「さっきの微笑みがだいなしだ」と思ったのは内緒だ。

「ナルを満足させるようなのを作るのは大変だな〜」

クスクスと笑いながら私は所長室を出た。




















その後、予想通りやってきたぼーさんたちにも紅茶のクッキーは好評でした。
リンさんもこれなら食べれるそうなので、これからもお菓子作りを頑張ろうと思った琴音でした。(あれ?何か作文っぽい?)







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