思い出のファイル

□お菓子はいかが?
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「できた〜♪」

オーブンから取り出して冷ましたそれらを見て、琴音は歓声をあげた。
少し食べたが、なかなかな味だった。これならイケるかもしれないと思った。

「ふふふ。みんなにも感想聞こっと」

多分いつものように暇潰しにやってくるであろうぼーさんたちのために多めに作ったそれらを袋に入れる。

「いい香り♪」

ふわりと香る匂いに頬を緩めて笑う。その香りで充満する台所を片付け、仕度を整えた琴音は家を出た。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「こんにちは〜♪」

元気な声で言った琴音だが、SPRのオフィスには誰もいなかった。


(今日、麻衣は遅れるって言ってたからわかるけど………このヒッキー'sめ!!)


所長室の研究馬鹿(ナル)と資料室の仕事馬鹿(リン)に軽く毒づいた琴音はやれやれと溜め息をついた。

「とりあえず紅茶いれて〜。お菓子を渡して(食べさせて)〜感想でも聞こうかな〜」

紙袋を机の上に置き、紅茶をいれるために給湯室に向かう。
今日は一段と気を入れていれねば、と妙に燃える琴音だった。




















ガチャ


「ナル〜、やっほー♪紅茶飲む?」

「琴音か。今日はいつもよりテンションが高いな」

いつも以上にニコニコしてご機嫌な様子の琴音にナルは若干呆れ気味に見ていた。

「まあ、ちょうど休憩をしようとしていたからな……」

そこで素直に「紅茶を注いでくれ」とは言わないナル。少しは人にものを頼んでみればいいのに。そしてその態度のデカさもなんとかしろ。
……そう思ったが口にはしない。すれば切れ味抜群なナルの嫌味でスッパリと切られてしまうからだ。(経験済み)

「じゃあどうぞ。それとクッキーもあるんだ。それも食べて♪」

「…僕は甘い物は好きじゃないと言ったはずだが?」

眉間にシワを寄せるナルを無視し、籠にもったクッキーと紅茶を机に置く。

「甘くないから、このクッキー。美味しいよ?」

そう何度も繰り返し、「食べてみて」と目を潤ませ、睨もうとも拒否しようとも決して引かない琴音にナルはついに折れた。

はぁ、と溜め息をつくナルに琴音はにこっと微笑む

「溜め息つくと幸せ逃げるよ?」

「そうさせているのは現在進行形でお前のせいだ。そしてその程度で逃げる幸せなど、所詮その程度でしかないんだろう」

そんな幸せ逃げても一向にかまわないし、欲しくもない。

そのあまりにもナルらしい言い方に琴音は苦笑を禁じ得ない。

「じゃあどんどん幸せが逃げていくがいいさ。……そんなことよりクッキー食べてよ〜」

再びそう言い、じっとナルを見る。ナルは琴音のキラキラした視線にたじろぎながらもクッキーを一口食べる。














ナルの目がちょっと見開かれた。それに私は微笑んだ。







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