思い出のファイル

□出会い
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《……すまないな。関係のないお前にまで迷惑をかけて》

「迷惑とか思ってないから。むしろ話してくれてありがとう。少しはスッキリした?」

ようやく顔を上げた白狐は桔梗色の瞳を潤ませながら苦笑した。その表情にはまだ悲しみがあるものの、先程よりはずっとよくなっていた。

「怪我は無事治ってる。妖力もしばらくすれば回復する。そしたらあなたはこれから先どうするの?」

《仇を……仇を、とる。死んだあいつのためにも、一族のみんなのためにも、俺は裏切り者である奴を、倒す》

決意に満ちた目でそう宣言する白狐に、琴音は何か言おうと口を開きかけたが白狐は前足を上げてそれを制した。

《お前の言いたいことはわかる。奴を倒したって一族がみんなが生き返るわけでも喜んでくれるわけでもない。……だが、これは俺のけじめなんだ。みんなの仇をとるなんて大義名分をかかえても結局はただの復讐だ。俺は、奴を許せない》

だが、と白狐は続ける。

《俺は復讐に囚われるつもりはない。あいつは俺に生きろと言った。あいつの最期の言葉を違えるつもりは毛頭ない。だが、逃げて生きていくのは嫌だ。
だから俺はもう一度奴と戦う。これは俺の問題だからお前は何も言わないでくれ》

その瞳には憎しみや恨みで染まってはいなかった。強く、剄く、決意に満ちた瞳。覚悟を決めた瞳だった。生きようとする強い意志が感じられた。

自分は白狐の声を聞き、助けて手当をして話を聞いたが、これは白狐の問題だ。口出しも手出しも部外者である自分には許されない。

「じゃあ、約束。絶対、絶対生きて。お連れさんとの約束を破らないで。悲しませないで」

琴音の言葉に一瞬虚を突かれた白狐だったが、微笑んで頷いた。















それから3日後、白狐は体力も妖力も回復した。

《お前には本当に世話になった。ありがとう。俺は奴を倒す。絶対死にはしない。あいつもお前も、悲しませはしないさ》

そう言って笑った白狐を琴音は抱きしめた。
背を向け去っていく白狐を見送りながら、「どうか無事で」と願った。







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