宝物庫

□Seventh Heaven
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互いの部屋を使わないのが
暗黙の了解の筈だった

…だが
今宵の君を酔わせ過ぎたのは
誰あろうこの僕だ

責任感というだけならば
余所に部屋を取れば済む話だったが

君を抱えるようにして向かったのは
生活感のほとんどない僕の自宅だった


強がりな君は
自分の酒量を超えたことを悟られたくなかったのか
今夜はいつもより余計にグラスを重ねていた



いつだったか…君は僕を
Ginのような男だと呟いたことがあったね


その頃から
君の胸元に光るのは…月長石

蒼いシラーが美しい
ほぼ透明に近い極上品

…きっと【Blue Moon】になぞらえたものだろう


僕が気付いてないとでも思ったかい?



エントランスを抜け
エレベーターに乗り込み

最上階へのパネルに触れてから
君の顔をさり気なく見やる

視線に気付いた君は
僕を見上げて薄く微笑む



…ごめんなさい
ちょっと飲み過ぎたかも


僕こそ…
解っていながら止めなかったからね




口数こそ少ないけれど
互いの目を覗き込めばそこには

欲望に濡れる共犯者の眼差し




程なく目的の階に到着し
君の腰を抱くように部屋へと縺れ込む



灯りを点けない部屋でも際立つ

照れと緊張の為か上気した頬に
しっとりと濡れた紅い唇


さしずめ
【Kiss of Fire】といったところか


燃え盛る炎と甘い口付けを意味するカクテルを思い浮かべ

その唇を自らのそれで覆った



…ん…ッ…


押し殺したような甘い吐息に
僕の胸も疼くように震える


角度を変えながら貪るように
口腔の深くまでを舌で愛せば


君の為にラストオーダーで僕が作った
【Between the Sheets】の味が仄かに広がる



こうなる状況を示唆したような名前のそれを

口にしたこと…君は記憶に留めている?

僕の手元を見ていた君が
目を細めたのを見逃さなかったよ




シャワーを…と掠れた声で求める君に
妖艶に笑い掛けて唇で次の句を奪う



せっかくの君の香りを…
洗い流す手はないだろう?



…ふふっ…そうね
それはお互い様かも…ね



君は僕の腰に
自らのそれを押し付けるように引き寄せながら

甘い吐息と共に僕の耳元に囁いた
 
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