宝物庫
□クリスタルロード
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車を降りて辺りを見ると、目の前に小さな教会が建っていた。
5月にしては少し肌寒い風だけど、見上げた空はとても広くて空気が澄んでいた。
「気持ちいい。侑人さん、ここは?」
「沖縄だよ。九条院グループが経営するリゾートホテルにある教会なんだ。鍵は開けてもらってるから中に入れるよ?」
2人で一緒に扉を開けて長いバージンロードをゆっくりと進む。
「侑人さん、このバージンロード」
「気付いたかい? 海の上に教会が建ってるからね。クリスタルバージンロードだよ。足元の海を見ながら歩けるんだ」
「・・・素敵」
夜だから青い海は見えないけど、ロウソクの灯で照らされた水面はどこまでも深い藍色で、侑人さんみたいだった。
祭壇の前まで来ると、繋いでいた手を離して向き合った。
神聖な空気が漂う教会の雰囲気にのまれてお互いの気持ちが高鳴る。
「鏡果 寂しい思いや不安にさせることがこれからもあると思う。だけどずっと君だけを愛し続けると今ここで誓うよ」
「あたしも・・・・侑人さんだけを愛し続けることを誓います。」
見つめあった瞳が近づき、今日何度目かのキスを交わす。
角度を変えて近づく唇は、何度も何度も繰り返され、全身の感覚が全て彼に奪いさらわれる。
お互いの吐息が漏れても、まだ続く甘いキスに2人の時間が溶け込んだ。
「いつか、カリブ海の教会で2人だけで挙式をあげよう」
「あたしはこの教会がいいな」
「じゃあ この教会とカリブ海の教会であげようね」
見つめあって微笑みあう笑顔に未来の自分が映る。
高く澄み渡る空と輝くエメラルドグリーンの海の中で幸せそうに笑う2人の未来を想像しながら、あたしはうんと首を縦に振って返事をした。
Fin
⇒鏡果よりお礼