頂き物
□うさぎ うさぎ
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「---月?…あ、そっか。今日十五夜……。ってまさか、それだけのために呼び戻されたわけっ!!?」
「他に何がある。」
平然と言ってのける黎深に、今度こそ本気で脱力する。
「…それならそうと言ってよー…。仮病なんか使わないでさ。」
「実際に、月見をするから帰って来いと言ったって、そんな暇はないとかで帰らぬのはそっちだろう?」
「それは君が私に仕事を押し付けてるからだろっ!!」
「…………百合。」
「何さ。」
「膝。」
さもそうする事が当然だとばかりに言い切る黎深。まさかこんな短時間で二度も脱力するとは思わなかった。
「…わかったよ。膝でも何でもお貸しますよ。」
「おい。」
「何?言っとくけど、今から団子を作れってのは無理だからね!!」
「そんな物はいらん。」
「え、違うの?じゃあ何?」
パチンと扇子を閉じ、室から出てゆっくりと百合に歩み寄る。
そして彼女の背に、自分が今まで身に纏っていた紅い着物をかけてやった。
「……へっ?」
「何か着ろ。風邪で倒れるつもりか?」
「なら君だって、」
「私は良い。」
「……ありがとう。」
照れ臭そうにはにかむと、途端黎深はぷいとそっぽを向き、不機嫌顔で黙り込んだ。
「ほら黎深、今更そんな照れなくてもいいじゃん。早くしないと膝貸さないよ?」
「……」