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□白銀の思い出
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「楸瑛ー…っ!?」


迅が声をかけたその瞬間、冷たい湖へ落ちていった。
満月の夜、九彩江の蒼湖に現れる人魚を見に行こうと半ば暇つぶし半分で迅と宴会場を抜け出してきていた。
そして小舟で探している時。
宴会で無理矢理呑まされた酒が回ってきたのか、ここに来て急に目眩がした。
そして次の瞬間には水しぶきと共に楸瑛は落ちていた。
いつもならすぐにでも上がってこれる深さも、今日は頭が朦朧としているせいで身体が思うように動かなかった。







髪結いが取れ、月明かりが差し込む透明な水中へと広がり藍色の衣と帯が溶けこむように揺らぐ。



水の感覚と昊の月灯りが心地よく、息さえも苦しく感じない。
コポコポと音を立て沈んでいくのに対し、頭は妙に冷静だった。



深く、深く落ちる中、

永遠にこの心地よさが続けばと…




『藍家の四男?ああ、余り噂は聞かないが…。どうせ兄や弟のおまけだろう』




『いいですか、藍家の恥にならぬこと。しっかりと兄や弟を立てるのですよ』


宴会での耳障りな雑音もかき消し、



この時ばかりは何を捨てても、考えなくていいと思った。



自由になったと。



瞳をゆっくり閉じる。




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