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□雪華咲く空
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1.予章
月が青かった。
月明かりが目の前の人物を照らし何故と思う反面絶望した。月明かりに映し出されたその表情は酷く冷たく、無表情だ。
声が、でない。
目先には剣の先に赤いものがぽとりと落ちた。
『かえせ』
か え せ ?
ゆっくりと近づき、そして手を伸ばす。
『かえせ、何もかも』
その言葉の意味を理解した途端、体中震えが止まらなかった。
手は男の瞳のところで止まり、次の瞬間視界が揺れる。
左目に激痛が走った。
その場で悶え込むが声が出せない分余計に苦しい。
どうして今更、
どうして…
雪華咲く空
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