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□GOSICKパロ
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A





白く細長い指が本のページをめくる。
床のカーペットの上にごろりと横になり、再び本に目を戻す。
最新の機械学、古代史、宗教、呪詛、錬金術など英語やフランス語、中国語、古代文字で書かれたさまざまな本がある。床に散乱した本に囲まれ、あらゆる知識を頭の中へ入れている。
そう、今日もいつもと変わらない。
変わらないのだ。
ただ一つを除いては。


「おい、藍楸瑛」


ソファーで優雅に紅茶を飲む楸瑛を機嫌よく「なんだい?」と答える。
その態度に無償に腹が立ってきて今にも本を投げつけてやりたいくらいだ。


「なぜ貴様がここにいる。ここは俺の場所だ」


「いいじゃないか、一応ここも図書館なんだし」


「良くない。気が散る、邪魔だ。お前なんか女の尻でも追いかけてるほうがお似合いだ。それとも今日も約束をすっぽかすつもりか?」


「約束?あぁ、あの子か。というかなんで君がそれを知っているんだい?」


「お前がここに来てから、お前の恋人やら婚約者と名のる女たちがぞくぞくとあの階段から押し寄せてくるようになった。どう責任を取ってくれる」


「それはまた、大変だね。でもおかしいな。すっぽかした女の子たちからまったく音沙汰ないんだよね」


女の子たちは、と言うとデートをすっぽかした理由がこの植物園にいる誰かだと思い、怒り狂い憎の形相をしてここへやってきたのだ。
しかしその後、青い顔をして、何やらぶつぶつと呟いている女の子たちが続々大図書館から出て行くのを何人もの人が見たそうだ。
それもまた別の話だ。


「お前なんかを好きになる女の気持ちが分かん」


「じゃあ分からせてあげようか?絳攸。今なら優しく教えてあげるよ」





もう限界だ、と思い本を片手に楸瑛に投げつけようとした瞬間、業務用のエレベーターの扉が開いた。




中から一人の男がこちらに歩いて来る。





「揚修…」










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