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□涙の理由
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(絳攸幼少期)


涙の理由


黎深様に拾われてはや数ヶ月…
最近気になることがある。


朝方、絳攸は眠気覚ましに庭院を散歩していた。
桜は満開に咲き乱れ、ひらひら絳攸のもとへ落ちてくる。
春の日差しが、緑がかった銀色の髪を照らし絳攸は眩しそうに目を細め呟いた。


「もう春なんだな……。」


庭院を進むと、紅家で一番大きい桜の木がたたずんでいた。


(あれ、誰かいる…)


紅色の着物に扇、すぐに黎深だと気づき絳攸は小走りで黎深の元へと駆け寄った。


「黎深さま、おはようございます…」


黎深は絳攸がくるとさらに不機嫌な様子になり、絳攸の顔をじっと見つめるのであった。
最近、自分がそばにいるとずっとこの調子だ。

なんだろう、この状況。
怖くて目が離せない…

「………。」

「………。」

「………。」

黎深はしばらくして無言でその場を立ち去っていった。
残された絳攸はかなりの落ち込みと悲しさで、下をうつむいた。
ここ最近会話をしてくれないのといい、今のこといい…



(僕、黎深さまに嫌われているんだ……)

花びらが風で悲しく散った。
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