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□彩りの世界
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桜の花びらが風にのり、頬を掠めていく。



少し風にあたろうと外に出ると、近くの桜の樹木に目を留めた。
艶やかな薄紅色の花びらがひらひらと舞い注いでいる。



『絳攸、一人で花見か?』


『主上、楸瑛…』


花より団子かな、と楸瑛が持ってきた酒瓶を見せる。


近くの席で酒を飲み交わすうちに気づくとほろ酔い状態になっていた。



『主上の側近になってから半年、長い半年だった気がする』


『三人で徹夜したり、新年を迎えたり。こうして思い返すと私たちって一緒にいなかったときの方が少なかったんじゃないのかい?』


『余は二人がいて良かったと思ってるぞ!こうしてたまに飲む酒が楽しみだ』


『あんたはいつも雪見酒をしよう、とか紅葉が綺麗だから外で酒でも飲まないか、とか言ってばっかりじゃないか』


『まあまあ、絳攸。主上だってここ半年頑張ってきたんだから少しくらいいいんじゃないか?』


『楸瑛…、余は明日からもっと張り切るぞ!』



そう話をする間に時間はゆっくり流れていく。
杯に桜の花びらが落ちる。
ふと見上げた夜桜は、今までで一番美しく見えた。

ふと、劉輝がぽつりと言う。





『こうして楸瑛や絳攸と、また花見酒を出来たらいい…』


『何言っているんですか、あなたの側近なんですからいつでも出来ますよ』


楸瑛の言葉にふっと息を漏らし泣きそうな顔で笑う。


『余は幸せだな…。では約束だ。いつかまた、こうして酒を飲み交わそう』


いつかまた、と劉輝は言った。
絳攸はふとどこか別の未来の、遠い約束に思えた。

優しい月の光が当たり、ゆったりと流れる時間が心地よかった。
他愛もない会話をし、笑いながら酒を飲む。
そうしたことが劉輝のいう「幸せ」なのだ。







この幸せが「いつか」と言う言葉で永遠と続くような、月の光に包まれた温かさに。


月を見上げると、温かいものが頬を伝っていった。







予章「追憶」




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