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□雪華咲く空
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一章「雪模様」






白い包帯に赤黒い血が滲む。
感覚のない腕を持ち上げると、そのまま散らばった硝子の上へと振り下ろした。







* * *



執務室では、先ほど外回りから帰ってきた楸瑛が報告を受けていた。


「ここ最近、上流階級の貴族ばかり狙われる事件が多数報告が来ています。どの報告書も同様部屋が荒らされた形跡があり、家主が殺害されていたそうです。金目のものは取られていない様子でしたし、殺害された貴族と何らかの関係があると見て調べているところです。」

「ふむ…、複数犯なのか?最近は警備を強化していると聞いている。そう簡単には屋敷内に入れないだろう。」



「その可能性もありますね。内部から招き入れた、と言うこともありえます。しかし、今のところ全く手がかりがつかめていない状況です。周辺の聞き込みも行っているようですが駄目ですね、どこに潜んでいるかわからない相手を捕まえることは雲を捕まえると同じことです。」

重い空気の中、絳攸は報告書を見ながら無表情のまま言う。


「事件の被害者が官吏であったものもいたから今御史台が動いている。それに右左羽林軍からも派遣が出るそうだ。」


「私も今夜は升家の警備を任されていてこれから向かうところなんだ。」


「升家に?被害周辺地域だな。」


「周辺地域の警備を固めて取りあえず様子を見るそうだよ。」


「連日徹夜というわけか。ご苦労なことだな。」


「君も今吏部の方が大変なんだろう?宮使えしていた貴族もいたし人事が大きく動く。それにしても吏部はいつも忙しいしね。」


一瞬吏部尚書の顔を思い浮かべ、深いため息をつく。


「まぁ…な。主上。私もこれから吏部へ戻ります。戻ってくるまでにこの書類全部片付けておいて下さいね。」


「これ全部をか!?絳攸の鬼!」


「ごちゃごちゃ言ってないで早くやれ。夜までにまた来ますからそれまでにですよ。」


「主上、私もそろそろ。」


「楸瑛は充分気をつけるのだぞ。」

「わかってますよ。」








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