story

□鈴羅屋物語
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「井上、今日の放課後ヒマ?」

休み時間。いつも連んでいる友人が正和に声をかけました。

「ごめん、今日も家の手伝いするんだ」
「お前、付き合い悪すぎー!」

そう口で言いつつも、友人である池上の顔は笑顔でした。何故なら、彼は「鈴羅屋」の風呂が大好きだからです。そして、その風呂の湯加減などを見ているのは正和だと知っているからです。

「だからごめんてばー」

正和も笑顔で返しました。

「まぁ、良いけどな。お前が来ないなら俺が行けばイイだけだし?」

それはつまり、今日池上が「鈴羅屋」の風呂に入りに来るということです。

「待ってるよ!今日は池ちゃんが好きなフルーツ牛乳もあるしね」
「マジで!?じゃあ絶対行かなきゃじゃん」
「何の話してんだよ?」
「お、お前らちょうど良いところに!なぁ、今日みんなで「鈴羅屋」行かね?」

正和と池上のそばによってきたクラスメート達に、池上はそう問いかけました。

「いいぜ!俺らも今日行くかって話してたんだよ」
「いつもありがとうね、みんな」
「いいっていいって。その代わりー」

クラスメートの一人が、正和へ顔をずいっと近づけました。

「そ、その代わり…?」

クラスメートはニコッと笑うと、すぐに土下座をしました。

「科学の宿題写させて!」
「べ、別にいいよ。はい」
「サンキュー!おぉ!ちゃんとやってある!!」

正和からノートを借りたクラスメートは、すぐに宿題を写しはじめました。

「井上ってエラいよな〜。家の手伝いしながら、ちゃんと勉強してんだもんな」

池上が感心したような言葉を漏らしました。

「僕、部活入ってないからさ。その時間に勉強してるんだ」
「確かにお前、家の手伝いで部活入ってないもんな」

他のクラスメートもなるほど…と頷きました。

「おわったー!井上、サンキュー!」
「あ、お疲れ様!」

クラスメートからノートを受け取ると、正和はニコッと笑ってそう言いました。

「じゃ、今日の放課後はみんなで「鈴羅屋」な!!」
「待ってるよ、みんな」

池上の言葉の後に正和が言うと、みんなはイエスの返事を返しました。

丁度その時、午後の授業の開始を告げるチャイムが鳴り響きました。


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