story
□悲恋
1ページ/1ページ
見てしまった……。
この事実を、僕はどうしたら良いんだろう…?
悲恋
「っ…」
零れそうになる嗚咽を堪えながら、僕は走った。
──分かりきっていた、ハズなのに……。
結ばれないことも、あの人が僕のモノにはならないってことも、全部……。
だって、これは僕の勝手な片想い……。
でも、あの人はいつだって、僕に向かって微笑むから……。
──期待、していた……。
気づけば、僕は森の中の開けた場所にいた。
空は曇天。今にも雨が降り出しそうだ……。
「っ……」
見たものを思い出して、また嗚咽が出そうになった。
──あの人が、恋人と口づけを交わしていた。
たった、それだけのことなのに……。
だけど、その時のあの人には、恋人しか見えなくて……。
冷たい雨が降り出した。まるで、僕の心に呼応するように……。
……そうだ。僕は雨鬼の子供。僕の意思と雨は、繋がってる……。
雨に打たれながら、僕は涙を流した。
苦しさが和らぐことはない。多分、それが罰なんだろう……。
主人の恋人に、恋をしてしまったこの僕への。
雨は激しく降ることはなく、静かにサーサーと降りしきる。
……これが、絶望と言う感情なのか……。
ねぇ…僕はどうすればいいの?
この苦しみを、この想いを、僕はどうすればいいの……?
問うたところで、答えてくれるモノは何処にもいない。
雨の中、僕はただただ、泣き続けた……。
[END]
雨鬼…「水」の力を持つ鬼の中の、雨を操ることのできる鬼。天候を操る力を持つ鬼は一握りであり、それぞれの力を持つ鬼達より神聖視される(あくまでも若宮の勝手な考え)
…これは某SNSにて書いているBLシリーズの話ですな(´Δ`;)近い内にサイトにも上げます