story
□最愛の人へ〜届カヌ想イ〜
1ページ/1ページ
冷たい風が、ナイフのように頬に当たる。
春の暖かい風がとても恋しい。
だけど──
最愛の人へ〜届カヌ想イ〜
初めて君に出会ったのは、中学校の入学式だったっけ。
同じクラスで、同じ趣味持ってて、すぐに仲良くなれたよね。
仲良くなれて、いつも一緒にいて、気がつけば君に恋してた。
君に恋をして、拒絶されると分かってて告白した。
だけど、君は拒絶しなかったね。同じだよって言って、抱きしめてくれた。
それからの毎日は楽しかったよ。
隣には君がいて、喧嘩とかもたくさんしたけど、それでも、目に映る全てがキラキラしてた。
それは全部、君がくれたモノだったよ。
君がいてくれたから、世界があんなにも輝いていたんだ。
その煌めきが、ずっと続くと信じてた。
君が僕の隣からいなくなった、あの日までは……。
高校に入って、バラバラになって、君に会えない日々が続いた。
それでも、君が想ってくれてるって信じてたから、平気だったんだ。
帰り道が違っても、君が偶然を装って待っててくれて、少しの時間でも一緒にいれて、嬉しかった。
でも、それがある時パタンと止んだ。
学校が忙しいのかもって思って、何も言わなかったよ。
暫く経って、今度は電話が無くなった。
流石に気になって、メールで聞いてみた。
電話代がかかりすぎて、親に言われちゃったんだ…ごめんね、と言った君に、そっかと言った。
気にはなったけど、まだ繋がりはあったから、浮かぶ疑問を打ち消して、平気な風にしてたよ。
でも……とうとう、メールも止んだ。
流石におかしいと思った。だから、返信されないと分かりつつも、メールしたんだ。
「ごめん」
「もう別れよう」
二回に分けて、送られてきたメール。
12月に入った後の、寒い夜に届いた最後のメールは
僕の心を、冷たい奈落の底に突き落とした……。
冷たい風が、ナイフのように頬に当たる。
春の暖かい風がとても恋しい。
だけど、どんなに春の風が吹いても
僕の心の冷たい冬は終わらない。
溶けない氷は僕を苛み、そして苦しめ続けるだろう。
それは、僕の中の捨てきれない君への想い……。
君は僕への想いを忘れていくだろうけど
僕は君への想いを忘れることなんてできない。
だって、君以上に誰かを愛せないと思うから…。
冷たい空を仰ぎ見る。
もう、届くことのない言葉を
もう、届くことのない想いを
もう、届くことのないこの声を
僕は空に向かって
君と同じ名前の美しい月に向かって
白く儚い吐息とともに送り出す。
「ずっとずっと……愛してるよ……」
[END]
ほとんど実話。あれからどれだけ経つんだか…。