story

□最愛の人へ〜届カヌ想イ〜
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冷たい風が、ナイフのように頬に当たる。

春の暖かい風がとても恋しい。

だけど──





最愛の人へ〜届カヌ想イ〜





初めて君に出会ったのは、中学校の入学式だったっけ。

同じクラスで、同じ趣味持ってて、すぐに仲良くなれたよね。

仲良くなれて、いつも一緒にいて、気がつけば君に恋してた。

君に恋をして、拒絶されると分かってて告白した。

だけど、君は拒絶しなかったね。同じだよって言って、抱きしめてくれた。

それからの毎日は楽しかったよ。
隣には君がいて、喧嘩とかもたくさんしたけど、それでも、目に映る全てがキラキラしてた。

それは全部、君がくれたモノだったよ。

君がいてくれたから、世界があんなにも輝いていたんだ。

その煌めきが、ずっと続くと信じてた。

君が僕の隣からいなくなった、あの日までは……。


高校に入って、バラバラになって、君に会えない日々が続いた。

それでも、君が想ってくれてるって信じてたから、平気だったんだ。

帰り道が違っても、君が偶然を装って待っててくれて、少しの時間でも一緒にいれて、嬉しかった。

でも、それがある時パタンと止んだ。

学校が忙しいのかもって思って、何も言わなかったよ。

暫く経って、今度は電話が無くなった。

流石に気になって、メールで聞いてみた。

電話代がかかりすぎて、親に言われちゃったんだ…ごめんね、と言った君に、そっかと言った。

気にはなったけど、まだ繋がりはあったから、浮かぶ疑問を打ち消して、平気な風にしてたよ。

でも……とうとう、メールも止んだ。

流石におかしいと思った。だから、返信されないと分かりつつも、メールしたんだ。

「ごめん」
「もう別れよう」

二回に分けて、送られてきたメール。

12月に入った後の、寒い夜に届いた最後のメールは

僕の心を、冷たい奈落の底に突き落とした……。



冷たい風が、ナイフのように頬に当たる。

春の暖かい風がとても恋しい。

だけど、どんなに春の風が吹いても

僕の心の冷たい冬は終わらない。

溶けない氷は僕を苛み、そして苦しめ続けるだろう。

それは、僕の中の捨てきれない君への想い……。

君は僕への想いを忘れていくだろうけど

僕は君への想いを忘れることなんてできない。

だって、君以上に誰かを愛せないと思うから…。

冷たい空を仰ぎ見る。

もう、届くことのない言葉を

もう、届くことのない想いを

もう、届くことのないこの声を

僕は空に向かって

君と同じ名前の美しい月に向かって

白く儚い吐息とともに送り出す。



「ずっとずっと……愛してるよ……」



[END]


ほとんど実話。あれからどれだけ経つんだか…。


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