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□恋人
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さて、どうしたものか。


このゴム人間を、家まで抱えていくのはトトには辛い。



だが、頼める者は側にいない。




「仕方ない……」




そう呟き、穴へ足を踏み入れようとした瞬間


「よぉ、おっさん」


トトは崩れかけた体勢を元に戻すと、声のした方を振り返った。


「ん?誰だったかな?」



そこにいたのは、

「一流コックのサンジだ」


「ルフィくんの仲間の……」



思い出したように、トトは微笑む。



「ところで、うちの船長はどうした?…やけに静かだけど」



「あぁ、ちょうど寝てしまった所じゃ」




サンジはタバコの煙をフゥと吐き出すと、ゆっくりと穴に歩み寄る。

と、思えばサンジは穴へ入り、ルフィを肩に担いで出てきた。




「じゃ、コイツは連れてくよ……あんたもいい加減にして寝ろよ」




すまんの、とトトは頭を下げた。





徐々に遠退いていく後ろ姿に、トトは叫ぶ。



「お前さん!」



サンジはなんだ?と立ち止まった。



「ルフィくんとはどういう関係なんだ?」


「仲間さ……大切な」


「うむ、そうだが……君たちはそれ以上ではないのか?」



少なくとも、とサンジは笑みを浮かべる。




「おれの片想いさ」








――ルフィの鈍感ぶりには、目を見張るものがある。


サンジの気持ちにも、ルフィは気付いていない。

………もしくは、気付かぬ振りをしているだけか…







「そうか…!がんばりなさいや!!」




サンジは歩きだす。



返事の代わりの煙が、風に揺れた。



End...
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