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□青
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メリー号の後甲板はいつでもぽかぽかで静か。
時折ゾロが大きな金属の塊を持ってくるが、静かに動くだけ。
ウソップは黙々と作業に集中出来る、というわけでそこは麦わら海賊団狙撃主のお気に入りの場所になっている。
今日も昼飯のあとすぐにそこへ向かった。色とりどりの絵の具を広げ、スケッチブックを抱えて腰を下ろす。
すぐ後ろでは、コックが食事の準備をする音が聞こえ、遠くで航海士になにやら怒られている船長の声が聞こえ、穏やかな波に揺られる船に身を任せ……
「……ぷ、」
「……?」
「ウソップ!」
ふと隣を見れば、ルフィが体を揺すりながらウソップをまじまじと見つめていた。
「…あ、おれ寝ちまったのか…」
「すげーきもち良さそうに寝てたぞ!」
なら何故起こしたと言いたいところだったが、寝ぼけ眼のままではその力も起きずぼんやりとしていれば。
「何描いてんだ?」
ルフィが指差したのは、ウソップの膝に乗っているスケッチブック。
まだ描き途中のそれは、みたままの海を描いたものだった。
「海描いてたんだけど…寝てたら絵の具も乾いちまったし、海の色も変わってるしもう続きは描けないな」
幾つかの色を混ぜて、使用したい色を作る水彩画では、全く同じ色を作るのは不可能だ。
ウソップはまだうっすらと色付いただけの紙を見て、ふぅとため息をついた。
「じゃあおれ描いてくれよ!!この紙に!!」
「描くんなら新しい紙使うぞ?」
「いや、おれはこれがいいんだ」
にっこりと笑ってルフィはいう。
ウソップは鉛筆を手に、じっとルフィを見つめた。
「…あんまりじろじろこっち見んなよ…照れるだろ」
「描いてほしいんなら我慢しろッ」
頬をほんのりと赤く染めていうルフィの額を鉛筆でつつく。
「わ、わかった…早く終わらせてくれ…」
ルフィに長時間じっとしていろという方が無理な話である。
ウソップは苦笑い浮かべて素早く鉛筆を動かした。
それから暫くして。
「うし、出来たぞ!」
「どれどれ、見せてくれ!!」
はふりと満足そうにため息ついてウソップが見せたのは、水色の空に、大きな風船に乗っかって浮かぶルフィの姿だった。
「すげー!!おれ浮いてる!!」
きらきらと目を輝かし、ルフィはそれを見つめる。
「これはやる!おれ画伯の貴重な絵だぞ?大事にしろよ?」
「いーのか?!やった!!」
ウソップがスケッチブックから切り離したそれをルフィに差し出せば、受け取ったルフィはがばりとウソップを抱き締めた。
「ありがとな!大事にする!!」
「当たり前だろー?…ルフィのお願いならいつでも書くけどな」
にこりと笑ったウソップはルフィの頭を撫でながら抱き締めた。
「ほんとか?おれだけトクベツか?」
「おう、お前だけだ!」
「さんきゅー、ウソップ!大好きだぞ!」
ルフィはウソップの頬に思い切り口付け、にししっと笑う。
ウソップもその笑顔につられてにかっと笑えば、ルフィを強く抱き締めた。
End.