雪の守護者
□九戦目.天気予報と注意報
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10月16日に元就は元の学校生活に戻った。
状況を表すなら『塵も積もれば山となる』が実行されていたとでも言っておこう。
馬鹿馬鹿しくも毎日続いていたらしい無駄な行動の結果。
イタリアに行く前に真っ二つにした机はイスごと新調されたようだが汚い文字が芸もなく刻み込まれ、入りきらなかったゴミに溢れてゴミ捨て場のようだった。
危険だと分かりやすく風紀委員に頼んだはずなのだが効果なし。自覚が無いとは恐ろしい。
机もイスも学校の公共物。雲の執着する並中の一部だと注意を促したつもりだ。
これ以上は雲に咬み殺される可能性もあるが俺は知らない。
「酷い臭いだ。貴様等、鼻は機能しているのか?」
基本教室にいない元就より長くいるクラスメイトの方が被害は大きい。
数人の苦い顔が見えた。
自らに被害の来る嫌がらせをしたそちらが悪い。
HRまでなら嵐も雨も来ないだろうと蒼空の席をしばらく借りることにした。
明日は申し訳程度に消臭剤を置こう。
――――
10月18日、朝。家の前にベルとマーモンが立っていた。
何しに来たのかと目だけで問えば迎えに来たと車に引っ張り込まれた。
「ししっ、友達って家に呼ぶもんなんだろ?だから王子が直々にアジトにご招待ってワケ」
「……君なら友達でもいいか。まぁ用事もあるしついでだよ」
着いて早々に渡されたヴァリアーの隊服一式に元就は目を細める。
ヴァリアーのエンブレムを故意に外された隊服。
全てが黒で統一されているが所々に巻きつけられた若草色のベルト飾りが個性を惹きだしていた。
戦装束に見えなくもない。
「私がデザインしたのよ〜。いいセンスしてるでしょ♪」
「俺が取り寄せたんだ。ボスの為にな」
「一応仲間だからその証だぁ!あのボスさんが言いだしたんだぜェ!」
「黙れドカス!!俺からの施しだ…元就、受け取れ」
暗殺部隊だと言うのにザンザスがスクアーロを殴ったり着てみろと騒がしく見ているだけで面白い。
測らせてもいない隊服は着心地がよくベルトも邪魔にならず動きやすかった。
夜に近づきヴァリアーを言いくるめて帰ることにした。
「元就様、お迎えにあがりました」
数時間後、チェルベッロの紹介で、元就はヴァリアーと沢田達の邂逅を目の当たりにした。
物語の一幕が頭の中にある映像と重なった。
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