雪の守護者
□二戦目.蒼空と偽りの姫の気持ち
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毛利君の表情が崩れたのはあの時くらいだ。
謝らない毛利君に制裁が始まって数日してから
俺と山本と獄寺君だけで毛利君と屋上で話した。
結局は俺たちが毛利君に攻撃して、それでも逆に俺たちが倒されてしまう。
「何のようだ、お前達。またマフィアごっこか」
俺たちの攻撃は毛利君にとってそんなモノとしか認識されていない。
それほどに俺たちは弱い。
「さっさと市原に謝りやがれ!」
「謝れば許してくれるって言ってんだぜ」
「俺、毛利君の考えが解らないよ」
フゥ太みたいに大きなスケッチブックを懐に直しながらどうでもよさそうに聞いていた毛利君の表情が強張った。
「貴様…沢田、貴様今何と言った」
「えっ?俺は毛利君の考えが解らないって…」
眉を顰め、眼は更につりあがり鋭く俺を射抜いた。
有りえないという風に、信じられないとでも言っているように、
その表情は誰からも間違えようがないほど激怒していた。
お前は何を言っている?俺は姫に害為す敵だろう?迷っているのに攻撃するのか?
貴様は今更何を言う。我は貴様の敵。敵に情けなど無用。
元就のそんな気持ちが解る筈もなくツナたちは動揺した。
お前達は馬鹿なのかと言うようにいつもの毛利君からは信じられないくらいの威圧と大声を俺達に向けた。
「我を理解出来るのはこの世に我と我が友だけでよい!!
たかがクラスメート如きに理解などされたくもないわ!!!!!」
高らかに宣言するように言い放たれた言葉に悲しくなった。
全部を解ろうなんてしていない。それでも傷ついた。
「友達だと思ってたのに…」
「10代目!こんな奴最初から友達じゃありませんよ!!」
「そうなのな。こんな奴の気持ちなんて分からなくて当然なのな」
山本と獄寺君の慰めの言葉に毛利君は少しだけ落ち着いた声で、
しかしまるで別人のように吐き捨てた。
「“そのような立場”にありながら……
貴様等は神にでもなったつもりか?
…甘いことだ。
見えることだけが真実などとは思わぬことだな」
俺達は見たこともない毛利君に唖然として、呆然としていて、
呆れたように屋上からでる毛利君を追うことも引き留めることも出来なかった。
―ツナside end―