零崎楽識の人間模倣

□第四幕.涙の定義(僕らの定理)
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この並盛で俺を知らない人間はほとんどいない。
碧い髪と眼は良くも悪くも目立つし今なら格好の噂の的だ。
堂々と誹謗中傷出来る人間に当たるのだから人通りの多い場所では視線が途切れることがない。




正直言ってウザったい。楽しくも何ともない。




「こんにちは。久しぶり、武くん。お悔やみ申し上げるよ。大丈夫かい?」
「アハハ!いーさんも久しぶりですね!俺は見ての通り元気ですよ」



それでも笑う。俺は笑ってる。まだ笑っていられる。
楽しいことがある。嬉しいこともある。



「いーさんは泣いたことってありますか?と言うかどうやったら泣けるのな?」
「さぁ、どうだろうね。武くんは泣けないみたいだね」



流石は戯言遣いだ。なんて言わなくても誰からでも解るだろう。

笑いはするのに泣けないんだ。

「人は悲しいから泣く。嬉しいから泣く。悔しいから泣く。痛いから泣く。苦しいから泣く。
何にせよ思い通りにならなかった時に泣くって俺は思ってるのな」





でも俺は?哀しいのに、虚しいのに、寂しいのに、泣けない。涙の雫すら滲んでこない。








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