雪の守護者
□五戦目.黄色の虹と雪の気象
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その日もやはり変わったことはなく変わったと言えば市原綾姫が帰ってきたことぐらいだろう。
1ヶ月ほどは大した変化のない日々を送っていたが今日はどんな言いがかりをつけてくるのだろうかと汚い席に座っていた。
「おいテメー!自分の問題に親まで使ってんじゃねーよ!!」
「ハハ、子が子なら親も親なのな」
いきなり何を言っているのか解らない。俺の親まで侮辱して何が楽しいんだ。
嵐は俺と市原綾姫の問題に学校全体が関わっていると理解していないのか。
「意味が解らない」
相当なことがない限り変わらない表情が今は眉間にしわが寄っている気がする。
「元就くん、酷いよぉ〜。元就くんが親に頼んだせいでぇ〜綾姫の会社が危なかったのぉ〜。綾姫ぇ〜元就くんに嫌われるようなことしたのかなぁ〜?」
相変わらず気持ちの悪い厚化粧と臭い香水だな。
そう言えば久しぶりにハッキングしてウィルスを送りつけた所は市原財閥だったか。
情報を少し流出させただけで危なくなるとは随分と程度の低い会社だ。
倒産、財閥解体まで追い込めばよかったのか。
違法麻薬や武器の譲渡など他にも調べれば何かしらでてくるだろうな。
「酷いよ!親まで使って!!」
馬鹿馬鹿しい。
原因が俺だったから別にどうでもいいが全てを俺の所為にされては堪らない。
「幽霊でも信じているのか」と一言零せば一様に汚い暴言を吐きながら騒ぎ出す。
「幽霊なんて見えないよ!!」
「そ、そんなもん居てたまるか!!!?」
「見たことないから分からないのな」
そうだ。幽霊など見えないし、現実に何の干渉も出来はしない。
予測した当然の答えに元就は低く笑った。
馬鹿にした人間全員に絶対零度の視線を向けて冷たく嘲笑った。
「あまり笑わせるな。我の両親はこの世にはいない」
いない者がどうして会社を潰しそうになるのかと自分の席と指定されていた汚い机を偽善聖者で真っ二つにした。
「死人―シビト―である両親を愚弄するな。手元が狂うやもしれぬ」
座る席も意志も無くなった。今日も太陽に近い屋上に向かうことにした。
無為に集まり他人に流されることしか出来ない人間がこれ以上喋ることもない。
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