雪の守護者

□十一戦目.呼ばれ出る闇
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ーー??sideーー

幸せなのに恐ろしい。
一生解らないだろうと思った言葉の意味を、現代で少し理解した。


現代は幸せ過ぎて恐ろしい処だ。


俺様が育ったのは裏社会の家庭だった。
物騒ではあったが、拾われた俺様には、それはそれは平穏で幸せ過ぎる毎日に不安にもなった。


一般家庭であれば誰もが雨風を防ぐ家を持ち、義務教育なる学びの場を与えられる。買い物をするにも腐るほどある食料に、遊び心すらある充実の生活用品。それが普通だと受け入れる人々。


有り得ない。信じられない。
そう感じながら幸せに流されるように生きていた。


後に産まれた育ての親の実子が旦那だと
一目で確信し、理性をかなぐり捨てて狂喜乱舞しそうだった。
義父や義母に微笑まれ、羞恥に顔を赤く染めるだけだったが。


今も昔もごちゃごちゃになっていた旦那に“佐助”と呼ばれる度に、この記憶に間違いはないのだと安心した。


それから俺様は情報を集めるようになった。
全てが幸せじゃないと分かったし、幸せではなく豊さの裏に戦国時代からの凄まじい時の経過と情報の力を目の当たりにした。


月日が経ち、大将が来て、北条の旦那に会って、BASARAコンツェルンを知った。

覚えある人物に会う中で、無意識に旦那は「元就殿は何処に居られるのだろう?」と首を傾げる。


この光景を一番求めていたのは元就だろうに、この世にいないのは可笑しい。そう澄んだ空色の瞳は心底不思議がっていた。


情報を集め続ければ、必ず見つかる。そんなことは思わなかったけど、無節操に集めた情報の一つとして元就に繋がらないことに愕然とした。

ネットを通じて、情報量の増大を望んだが、大きな肩書きを付けられただけで、結果は同じだった。



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