ばんがいへん
□lointain/初デート
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「露」
「紫苑……おはよう」
柔らかく笑った紫苑は、私の手を取って車へと促した。
「お願いします」
運転手さんは会釈をして、紫苑は私の隣に座った。
「まず俺の家に行こうと思って」
こっちを向いた紫苑は、胸元に気付いたのか目を丸くした。
「それ……」
「これ、すっごく大切だけど、箱から出しちゃった」
「……そうか」
ゆっくりとそれを手に取り、懐かしむように眺めていた紫苑は、
「家に行ったあと、もうひとつ行きたい所がある」
そう言ってまた笑顔になった。