ばんがいへん

□earth/舞踏会
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それから暫くして舞踏会リハーサルが間もなく始まるため、会場に向かった。ここから一緒に居るのは護衛とウルフだけ。小さいながらも公務の一環であるとの自覚を持って参加しなければいけないな……。

「ウルフ、どうしよう。緊張してきちゃった。失敗しちゃうかも」
「……私ができる限りフォロー致します。それに今回ははっきり言って"リハーサル"です」
「リハーサル?」
「ええ、王女はホテル・ド・クリヨンでの舞踏会に招待されることが決定しております。その予行演習のようなものですから、肩の力を抜いて下さい」

……初耳……。正直、これだけでもかなりの重荷なのに、これ以上の重責となりそうなのだけれど。私、あまり目立つことは好きじゃないのに。このまま消えてしまいたい。で、でも、ウルフに恥を欠かせないためにも頑張らないと!

――すぐに舞踏会が始まり、ウルフの腕に手を添えて入場した。カメラなんかには慣れてきた方だけれど、やっぱりとても緊張する。思わず添えている手の力を強めると、ウルフは私を見て少し口角を上げた。ぎこちないそれがなんだか面白くて、笑ってしまう。

それからワルツを踊り、これは練習の甲斐あってか無事クリア。ウルフは私よりもずっと上手で、上手くサポートしてくれた。続けて次の曲が掛かり、皆さんはまだ踊るようだった。暫くして様々な方とお話をさせて頂き一息ついたところで、控えていたウルフが、私に付いてくるよう言う。

「ま、待って」

慌てて追いかけると、ドレスを着ている私を気遣って手を差し伸べてくれた。舞踏会という場所もあってか、少しくすぐったい感じ。

そして連れてこられたのは、とても広いバルコニー。夜になってライトアップされた庭園を一望できて、とても素晴らしい眺めだった。夜空には月が輝いている。

「すごい、綺麗だね!」
「ええ。お疲れのご様子でしたから、こちらで一休みなさって下さい」

頷いてウルフを見上げると、上着を脱いで私に掛けてくれた。

「あ、ありがとう……」

風はあたたかくて心地良いけれど……少し肌寒いと言えば肌寒かった。それに、ちょっと疲れているってわかってくれて、嬉しいな。
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