ばんがいへん

□earth/舞踏会
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「いいのかな、ウルフ」
「名家の出ですから、王女のお相手としては申し分ありませんでしょう。レア様と踊れるなんて、役得ですわね」
「なんだか申し訳無いのだけれど」
「一曲でも踊ればそれでよろしいのですよ。それに、レア様は未成年ですから早くご退場なさいますし」

それから軽く位置や振る舞いの確認を会場でして、私は他の参加者さんとは別の控え室に入れられ、専属でメイクや衣装の着付けをして下さる方も付けられた。

――この日のために特別に仕立てて下さったドレスを着て、別人のような雰囲気に仕上がってしまった。有名なオーパンバルの「デビュタント」に倣ってドレスの色にホワイトを勧められていたのだけれど、なんだか畏れ多いため、一見白のような淡いピンクで妥協して頂いた。紫苑や家族が見たら誰だと思われるに違いない。自信が無い私に、皆さんは似合うと大絶賛して褒めて下さった。王室のカメラマンさんに写真も撮られて、ソフィに至っては何故か自分のカメラを持参して私を撮っていた。

その後、軽くリハーサルをしてから暫く時間があるということで、折角なのでソフィを連れて開場である宮殿のお庭を散策することに。

そこで一人、偶然にも同い年の子と出逢った。イギリス在住のコーネリア。私のことを知っているというので驚くと、私は有名人だと言われた。コーネリアは今回が初めての舞踏会ではないらしく、私を勇気づけてくれた。

「大丈夫よ、比較的小さな舞踏会だから」
「う、うん」

明るくて、でもおっとりしていてとても話しやすい。彼女のパートナーはお兄様だそうで、今は一人で気晴らしにお散歩をしているらしい。他の参加者たちは同じ控え室にいらっしゃるそうで、恐らく私は危険も考慮して一人なのだと思う。

ソフィも交えて少し雑談をしていると、私がすぐに呼び出されてしまったので、お別れとなった。またパーティで、と約束をして控え室に戻る。するとそこには、正装で居づらそうにしているウルフがいた。部屋に入ると、ウルフは驚いた表情で私を見つめて唖然としている。それがなんだか面白くてソフィと笑っていると、ウルフははっとして恥ずかしそうに咳払いをした。

「ごめんね、ウルフ。似合ってるね」

ウルフは長身でかっこいいから、とてもよく似合っていると思う。ソフィも頷いている。
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