「俺で良ければいいよ。でも、俺も分からなかったらごめん」
「ううん、紫苑なら分かると思う。ありがとう!」
「どういたしまして」
先程までとは打って変わって、元気になった露。電話を終えて教室へ戻る手前、友達が数人、俺のことを話しているのが聞こえた。
「――どうだったんだよ? やっぱ彼女だった?」
「多分そうだろ」
「優しい声と顔してたもんねー。日本語? だったし」
……聞き耳を立てられていたらしい。
「おい」
話しかけると、ぎこちない怪しい動きを始めた。
「何してんだ。聞いてんじゃねーよ」
「にやけてたくせに」
「にやけてねえ!」
……にやけてないよな?
「彼女、すげぇ可愛いんだろ? アーサーが見たって言ってたけど」
あいつ、余計なことを言いふらしたな。
「可愛いとかいうレベルじゃない」
「惚気んなよ……くっそー、留学生のくせに!」
「はいはい」
それから散々誂われて、やっとのことで解放されたのは、それから暫く後。