学校が終わってすぐ、見計らったかのように露から電話が掛かってきた。珍しいと思いながらも、慌てて人気のない場所へ移動し、電話を取る。
「――露、どうした?」
「紫苑……」
泣きそうな声に、ひやりとする。
「何かあったのか?」
「ううん……あのね、今週、来てくれるでしょ?」
「ああ、行くけど」
「それで、申し訳無いのだけれど……勉強教えて欲しいの……」
どんな大事があったのかと思えば、そんなことか。安心したのと、露が可愛いのとで、思わず吹き出す。
「数学なんだけど……本当にだめなの。紫苑は得意だったよね?」
確かに数学は出来る方だけど、露に言ったことあったか? 教えてくれだなんて、初めて言われたな。