ばんがいへん

□lointain/不思議な子
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初めて見た日、その姿に圧倒された。
綺麗だと、美しいと思った。

まだ義務教育上がりの、年下の可愛い少女のようなあどけなさ。何もかも真っ白で、在り来たりな表現だが天使のようだと思った。向こう側が透き通って見えそうな全身の透明感が、純真無垢を主張していて――

「露ちゃん……」

この子が、あの。

面倒くさい、とあしらった過去の自分がひどく恥ずかしかった。紫苑に押し付けたのは自分なのに、後悔した。逢ってからまだ一分も経っていないというのに、気持ちが交錯して俺を惑わす。

こんな気持ちは初めてかもしれない。
守ってあげたいとか、自分のものにしたいとか、俺を見てほしいとか、そういう気持ちも含んでいた。

だけど……

「仲良くしようね」
「はいっ」

すっと形を変えた瞳。綺麗だとは思ったけど、その笑顔は可愛さの方が大きいように思う。どちらも秘めているなんて……。言葉に、出来ない。この子をそのまま形容する一語もなければ、俺のこの気持ちをぴったり表す言葉も存在しない。

――困った。

目の前の少女が、え、と小首を傾げた。さらさらと流れる白金色の髪に、紫苑も目を奪われているようだった。同じ気持ちなのだろうなと思って、更に困る。

白い肌と髪の神々しさ、光を湛える水色の瞳、佇む全身が完成された美の枠にはまっているようで、そのどれもが溢れ出している。

世界的に有名なモデルでも追いつけないのではないかと、一瞬でも思ってしまうようなスタイルの良さ。人形さながらの整いきった顔。

見た目だけではない、声も、雰囲気も、仕草も、全てが美しく、そのどれもが違和感なく彼女の一部になっている。

不思議な子だ。

俺はこれ以上の美しいものを見たことがない。


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