ばんがいへん
□lointain/初デート
1ページ/15ページ
「なあ、今度の日曜、何かある?」
そんなことを、紫苑に突然言われた。急にどうしたのかな。
「日曜? ……たぶん、何もない」
今週の日曜日はお稽古も入っていない筈だから、何もないよね。
「迎えに行く」
え、と取り敢えず頷いた私に、爽やかに笑ってそのまま通り過ぎて行った。思わずどきっとしたけれど、久し振りのお誘いに嬉しくて笑みが零れる。
そして、約束の日曜日になった。柄にも合わずお気に入りの洋服を選んで念入りに準備をしたら、柏木さんにも笑われた。
「ふふ、とても可愛らしいですね」
「もう……!」
そうだ、あのラピスラズリのネックレスも、と思って、首につける。似合うかどうかは別だもんね、と自分に言い聞かせた。
「お迎えがいらっしゃいましたよ」
「ほんとう?」
楽しみでわくわくして仕方ない。子供染みているなぁとは痛感しているものの、はやる気持ちを抑えられない。普段の学校ではあまり喋れないし、学校以外では忙しくて会うこともあまり無いのだから。