ばんがいへん

□earth/舞踏会
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――舞踏会当日。昼過ぎに開会のため、早朝からロンドンへと出発した。緊張しっ放しの私を講師のグレースさんが落ち着けて下さって、かの有名なビッグベンも車内からちゃっかり眺めた。会場入りして少し一息、という時、緊急事態が発生。

エリク王子が舞踏会に出られない。

お仕事の関係でロンドンに来られそうもないとのこと。準備をしていた侍従さんたちは大慌てで今後の対応を話し合い、のんびり私と会話していたソフィもそれに参加した。因みにウルフも私に付いてこちらに来ており、エリク王子との連絡もしていた。

電話中、唐突にウルフは柄にも無く大声を上げて驚いた。珍しくかなり狼狽えたウルフは私を頻りにチラチラと見ている。

「……? どうしたのかな」

ソフィも首を傾げている。そんな中、ウルフは取り敢えず話し合ってみます、と言って電話を切った。しんと静まり返っている皆に、ウルフはゆっくりと電話の内容を告げる。

「エリク様が、私にご自身の代役を頼まれた」

エリク王子が、ウルフに代役を頼んだ。周りは何故か妙に納得し、それなら、と頷いた。

「待て、私など務まらない。お断り申し上げる」
「それではこの事態はどう収束する?」
「王女の他のご親戚にお頼みしよう」
「今からじゃ到底無理だろう。ウルフ、お前舞踏会に出たことがあるだろう? 要領も得ている。適任だ」

他の侍従さんの言葉に、驚く。ウルフは昔、舞踏会に出たことがあるの?

「まあ……それはそうだが……」
「エリク王子のご指名だと話を通せば大丈夫だろう。王女様、それでよろしいですね」
「わ、私は大丈夫ですが」

ウルフを見ると、早速グレースさんに掴まり、お手並み拝見、と別室に連行された。あっという間に解決してしまい、なんだか拍子抜けで周りもウルフの災難を気の毒がりながらも談笑していた。
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