駅前タンポポ
□駅前タンポポ 5月
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――1階 大浴場 更衣室
「そういえば3人でお風呂に入るの、初めてだよね?」
羽織っていた上着を脱ぎながら佳織が呟いた。
「そうね、いつも時間バラバラだもんね。帰る時間が違うからかな?」
同様に上着を脱ぎながら答えるのは亜優。
寮に住む4人の中で、一番早く帰宅するのは佳織。
その後は亜優、穂菜実、最後に浩暉という順に帰宅する。
「そういえば…風呂に入るには時間、少し早いよね?こんな時間でも入れるんだ…」
着ていた野球の練習着の上着のボタンを外しながら、ふとした疑問を誰にでもなく投げ掛ける。
「あれ…ほなちゃん、知らなかったの?」
ほわんとした雰囲気と共に、亜優が穂菜実に言う。
「ここって1時間前までに寮母さんに連絡すれば、午前10時から午後10時までいつでも使えるのよ」
「そうだったんだ…寮母さん、見た事ないけど…誰なの?」
「あゆっち物知りだ!ウチも知らなかったもん。誰、誰?」
佳織も知らなかったらしく、この様子だと寮で知っているのは4人の中で亜優だけらしい。
「うーん…わかんない。電話をかけると、名乗らずに『今から準備しますね』ってだけ答えるから…」
「まっ、そのうちわかるっしょ!まずはお風呂!」
「わっ…待ってよ、柴ちゃん」
浴場の中へと走る佳織を追いかけるようにして、穂菜実と亜優は中へと入った。