駅前タンポポ
□駅前タンポポ 4月
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少女を迎えるかのように建っている建物。
外にある階段を上り、二階に上がった。
少女がこれから住むこの建物は、彼女が進学する高校の寮である。
この寮は二階建て。各階二部屋ずつと、二階の食堂と一階の共同浴場が存在する築一年目の真新しい建物だ。
彼女の部屋は4号室。食堂の隣で、階段を上がってすぐのところにある。
――ガチャン、ガチャ。
鍵を開けて、恐る恐るドアノブを回すと、扉が開いた。
真新しい木の匂いと白い壁、窓からの景色を一度に見て、感じた。
「……えへへ」
思わずはにかんでしまう。
少女は積み重なった段ボールの一つを開けて、白く小さな板を取り出して外に出た。
――バタン!
扉を閉めてすぐに振り返り、手に持った板を扉の目の高さより少し高い位置に取り付けた。
そこには、音符に囲まれた少女の名前が書かれてあった。
【♪浜貝穂菜実♪】
「…よしっ、完璧っ!」
穂菜実はそう呟いて、辺りを見回した。
「うーん…挨拶に行こうかな……」
穂菜実はひとまず、隣の3号室から挨拶に行こうと廊下を歩き出した。