駅前タンポポ

□駅前タンポポ 11月
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――高円寺記念球場


『只今より、第五回選抜地区予選の決勝を行います。先攻の鷲雅高校のスターティングメンバーは……』


「…………」


「…緊張するね、穂菜実」


両チームが試合前の練習を終え、整備されているグラウンドを見つめている穂菜実に声を掛けたのは、入部した時から毎日のように彼女の球を受けている、言わば女房役の堀木夕霞だった。


「…ゆーちゃん。あはは、別に緊張してはいないんだけどね」


「……え?じゃあ、なんでそんな難しい顔してるのよ?」


「あれ…見てよ」


そう言って促す穂菜実に従うように、堀木が相手――一塁側に陣取る鷲雅高校のベンチの方を向く。


「……あ。あれ、確か四番の…えっと、誰でしたかな?」


「杉澤彩香さん、だよ」


一人、ベンチの脇で黙々と素振りをしていたのは、以前の練習試合でプライドを完膚なきまでに打ちのめされた、二年生の杉澤彩香。






 
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