駅前タンポポ
□駅前タンポポ 9月
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第一週
〜夢の始まり〜
ーーガチャ。
まだ霧が残る時間帯。
穂菜実は地面をスニーカーの爪先で軽くつつく。
「すう……はあ……よしっ、頑張ろう!」
ユニフォームのポケットに手を入れ、指先で亜優から貰った御守りに刺繍された文字をなぞる。
九月になったとはいえ、まだ残暑が厳しい。
そんな中でも、この御守りを撫でるだけでそれも忘れられるような、そんな気がした。
大きなボストンバックを揺らして、平柿学園まで歩く。
途中で、御守りとは逆の方のポケットに入れていた携帯のバイブレーションが鳴る。
『あとでおうえんいくよ 柴』
メールを見ると、差出人は亜優だが、内容は佳織のものだった。
慣れていないのか、平仮名だけの歪な文章だったが、穂菜実にはそれがかえって心強かった。
「…えへへ…」
穂菜実は歩調を速めた。
今日は……練習試合なのだ。