駅前タンポポ
□駅前タンポポ 4月
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第一週
〜初めまして、駅前号〜
四月二日、天気は晴れ。
桜が数本並ぶ道の真ん中を、小型の引っ越し業者のトラックが走る。
そのトラックは真新しい建物の前で静かに止まった。
「……君、着きましたよ」
助手席でいつの間にか眠っていた少女が目を覚ます。
「ふああ……着きました?」
「はい。あの…荷物はどこに?」
「えっ……と…4号室にお願いします、2階の食堂の隣です」
しばらくして、詰まれていた荷物が全て部屋に運ばれた。
「……それでは、これで失礼しますね」
「はーい。ありがとうございましたーっ」
少女が乗っていたトラックが走り去り、沈黙が辺りを包む。
春の微風が少女の特徴である、茶髪の短いポニーテールを揺らす。
「すぅ…………はぁ…………」
一つ大きな深呼吸をして、少女は自分がこれから三年間生活する建物を見据えた。
「よしっ、頑張ろう!」
グッと拳を胸の前で握り締め、少女は敷地内へ入った。