駅前タンポポ

□駅前タンポポ 4月
1ページ/20ページ



第一週
〜初めまして、駅前号〜






四月二日、天気は晴れ。


桜が数本並ぶ道の真ん中を、小型の引っ越し業者のトラックが走る。


そのトラックは真新しい建物の前で静かに止まった。


「……君、着きましたよ」


助手席でいつの間にか眠っていた少女が目を覚ます。


「ふああ……着きました?」


「はい。あの…荷物はどこに?」


「えっ……と…4号室にお願いします、2階の食堂の隣です」






しばらくして、詰まれていた荷物が全て部屋に運ばれた。


「……それでは、これで失礼しますね」


「はーい。ありがとうございましたーっ」



少女が乗っていたトラックが走り去り、沈黙が辺りを包む。


春の微風が少女の特徴である、茶髪の短いポニーテールを揺らす。


「すぅ…………はぁ…………」


一つ大きな深呼吸をして、少女は自分がこれから三年間生活する建物を見据えた。


「よしっ、頑張ろう!」


グッと拳を胸の前で握り締め、少女は敷地内へ入った。






 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ