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□守り守られ
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空が夕焼けに染まる頃、俺とリーオは自室のベッドに寝転がり、リーオはどこかの大学教授が書いた論文集を、俺は聖騎士物語を読んでいた。

しばらくしてぱたん、とリーオが本を閉じた。

もう読み終わったのだろうか。

横目にうつったリーオの姿を見て、そんなことを考える。リーオは本を読み終え暇になったらしく、ベッドに腰をかけじっと俺の方を見てきた。


「…なんだよ。」

自分が読書をしている時に邪魔されるのが嫌いなリーオは、決して俺の読書中には話しかけてこない。
ただ、時々今のように何か言いたげに見つめてくるので視線にたえられずいつも俺から会話を切り出す。

「んー、またその本読んでるんだなって思って。それたしか、エドガーが死ぬ巻だったよね?」
「あぁ、そうだ。何度見てもこの死に方は気に入らねぇけどな。」
「相変わらずだね。」

当たり前だ、と言ってまた本に視線を落とそうとしたがふと疑問に思い、リーオに尋ねてみた。

「なぁ、お前はこのエドガーの死についてどう思う?お前の意見って聞いたことなかったよな。」

突然の問い掛けに少し驚きながらも、んー、と言いながらリーオは少し考え、言葉を紡いだ。

「…僕はこの従者が主を守って死ぬっていうのは、とくに立派だとは思わない、かな。だってさ…」

そこでリーオは曖昧に笑った。

「従者って、そういうものでしょう?」

その笑顔と言葉は、なんだか俺の胸の中にずしん、と重くのしかかった。

たしかに、従者は主を守るもので―…でも…。

「…リーオ…お前、何かあったら自分が死んでも俺を守るつもり、とか言わないよな?」

震える声でそう問うとリーオは困ったように笑いながら僕も一応従者なんだからね、と静かに言った。

…そんなこと、誰がさせるか。
従者が主を守るように、主にも従者を守る責任がある。ましてやそいつが自分にとって大事な人ならば当然だろう。

「誰も死なせねぇよ。」

そう呟いて、リーオの体を抱きしめる。

「お前は、俺が守るんだ。」

リーオは驚きながらも笑ってありがとう、と小さな声で言い、俺の背中に腕を回した。

俺の腕の中に感じるリーオの温もりがただ愛しくて、ずっとこの時が続けばいいのになどと願わずにはいられなかった。

END.
◆守り守られ

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