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□お近づきになりましょう。
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手が自然にシャッターを切ってしまって…と言うのは僕の体の言い撮影許可を求めるセリフで。
事後だったりもするのだけれど、大概それを言うと被写体の動物は許してくれました。変わりに食料を求められるので、ギブアンドテイク…撮影する変わりにご飯を提供させてもらいます。

「と言うわけで、バスケ部の皆さんに個人撮影の許可を頂きたいんです」

「どーゆー訳だよ、フミヤ!」

「僕のモノローグ聞いていなかったんですか?青峰さんはアホですね」

「モノ…」

「モノローグ…つまり、僕の独白です。要するに、僕が写真を撮れるくらいあなた達とお近づきになりましょう!って事です」

「最初からそう言えよな!」

モノローグの意味が分からなくて照れ怒った青峰さんは、ベチッと撮影の際に邪魔にならないように、と分けてピンで留めている僕のおでこをデコピンした。

「痛いです」

「痛くしたんだよ、バーカ」

「……」

ひりひりします…。どれだけ馬鹿力なんでしょう、この人。
額を押さえながら口を尖らせる、とガシッと頭を鷲掴みにされた。

「あ、青峰さん…っ、メリメリ言ってます…」

あたま…割れ…!

「……」

「あーっ!青峰っち、黒子っち弟に何やってんっスかー!」

「た、助け…」

涙目になって、僕の頭はボールじゃないです…。と黄瀬さんに訴えると。その本気具合をわかってくれたのか駆け付けてくれて、黄瀬さんによって、ようやく解放された僕の頭……。
兄さんじゃないですけど、僕も彼岸に行ってしまうかと思いました。なんなんですか、青峰さん。

「ワリ…なんかあざとかった」

「意味が分かりません」

そんな理由で僕をお花畑に飛ばさないで下さい。と少し眉をあげるとワリーワリーと九官鳥のようにそれを繰り返して、……謝るときくらい人の目を見ていってほしいものです。

「…黄瀬さん、ありがとうございました」

ぺこりと頭を下げると、いやいや、と手を振られた。

「いーっスよ。つーか、何の話してたんスか?」

「青峰さんがアホ…嘘です。僕、バスケ部の部活内の活動を撮影することは許されてますけど、青峰さんと兄さん、黄瀬さんの1on1とかの許可がないので、撮らせて貰えるのに何が有効かな、って思って」

…途中また青峰さんの手が伸びてきたので黄瀬さんの後ろに隠れます。冗談ってわけじゃなかったですけど、本気で青峰さんはアホだと思います。僕がどれだけひ弱かわかってません。

「あー…なるほど」

「特に緑間さんと紫原さんの許可をどうしようかな、と」

「お前嫌われてるもんな」

何せ、普段廊下で会ったときに睨まれるくらいで(よく見つけられるな、と思います)…。

「隠し撮りは得意なんですけど、肖像権で訴えられたら負けます」

「「……」」

フミヤの言い方に、青と黄は冷や汗を垂らした。こいつ、マジだ。と。

(ていうか、隠し撮り得意なんスね…)

(おい、俺ら撮られてねーよな…?)

振り返れば奴がいる、見たいなホラーには遭遇したくないものである。二人は切実にそう思った。

「3人とも真顔で何のお話ー?」

「…黒子っち弟…いや、フミヤっちの写真に対する情熱を語られてたっス」

「桃井さん、兄さんお帰りなさい」

「さつき、スポドリ」

「はいはい」

フミヤがバスケ部の撮影許可を得てから数日、居残り練習する面子の輪に加わり、カラフルな頭と一緒になってバスケを見ていた。

「…」

パシャリ…

「フミヤ…抜かりないですね」

「シャッターチャンスだったので」

束の間の休憩…。って感じですね。よしよし。
普段の動きが激しいバスケ最中の写真ではないのでブレたりすることなく綺麗に写真に納まってくれる彼ら。大分人物を取るのにも慣れてきたようで、締め切りまであと2週間ほど…うまい組み方ができればいいですね、と思った。

「じゃあ、フミヤっちと緑間っちと紫原っちが仲良く出来ればいーんすね!」

「まぁ、端的に言えば」

……どっちかと言うと、僕の方が素の彼らに恐れをなしているのですが、いいでしょう。の、乗り越えてみせます。

「何震えてんだよ。フミヤ、協力するんだからゴリゴリ君買えよ」

「青峰君、前払いですか」

「みんなで食べながら作戦会議っス!!」

「フミヤ、僕はバニラシェイクが良いです」

「とか言いつつ黒子っちの方が単価高いじゃないっスかもう!」

んんん。盛り上がってきましたけど。……。あれ、僕、これは奢る流れなんですか。

「…分かりました」

まぁ…百○円×人数分で皆さんのベストショットを買えるなら天秤が釣り合っていない気もしますが。という計算をして、すぐにOKを出す。

「では、青峰さんと黄瀬さんはゴリゴリ君。兄さんはシェイクですね。桃井さんはどっちが良いですか?」

「わ、私もいいの?」

「?逆に、桃井さんだけ仲間外れだと変ですよ?…というか、最も彼らの情報を知り得ているのは桃井さんだと思うので、少しお高くてもいいと思っています」

そうですね、アイスなら例えば、ダッツとか。そう言うと、ゴリゴリ君派が差別だ!と喚き始めたのですが。

「区別です。……、けど…、2本なら良いです」

「っしゃ。ソーダと梨な」

一本増えただけで機嫌が良くなった青峰さんは、扱いやすいですね…と思いながら(腹黒い…?何のことですか?)。

「あ、ありがとうフミヤくん!」

わー、嬉しいよ。という桃井さんを撫でたい衝動を頑張って押さえてました。

「桃井さんは何味が好きなんですか?」

「んー、私はサクランボとか好きなんだけど。アイスだとなかなかなくて。イチゴかなぁ?あ、でもでもダッツよりテツくんとシェイクおそろいでストロベリーにしようかなぁ」

迷っちゃうよーっ、と兄さんをちらちら見る桃井さんが可愛くて。絶対食べてる顔可愛いんでしょうね…と隠し撮りする予定を立てる。

「よし、シェイクにする!」

「はい、分かりました。ではアップルパイも付けますね」

「いいの?」

私アップルパイも好きなんだ、とはにかむ桃井さん…。そんな気がしてました、なんて言う勇気はないですけどお似合いだったんですよね、何か。

「もちろん。区別ですから」

「フミヤ、僕とポテト半分こしましょう」

「それももちろんです、兄さん」

その後、兄さんと桃井さんの間で歩くという幸せな空間に僕は酔いしれていました。あ、きちんと作戦会議はしましたからね?


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