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□緑黄色野菜か&高尾のターン
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何度目かになる千尋からの夜のコンビニへの買い物の誘いに、初めてNOと返事をした。
すると、レスポンスがいやに早かった。
曰く、『何か予定あるのー?』ということだ。
ついでに、『ぐすん、千尋ちゃん泣いちゃうから』と絵文字が揺れるのは、冗談だということがわかっていても、こっちの反応を楽しんでいることがわかっていても…。
それでも、ぐ…とうなってしまう。
数分返さないでいると、追い打ちが来た。

『ねぇねぇ、電話してもいーい?』

やけに間延びした口調は、秋田に行った巨体を思い出すが、
「は?」と眉間にしわを寄せるには十分だった。
こちらが授業中にいじっていない…というか、昼食中なのをわかっていっている。のだが。

『待つのだよ。食事中とはいえ校内での通話はできん』

『そんな校則なかったと思ったけどなぁ…。いいじゃない。練習試合を控えた真太郎君に直接エールを送りたいな』

『何でそれを知っているのに誘うのだよ!』


相手は東京三大王者の一角と言われている正邦だ。スタミナ面では少々苦戦するかもしれない。

『いやぁ…。試合のことは知らなかったよ?でも、真太郎君からお断りがあるってことはバスケでしょう。
金曜日だけど、特別祝日がかぶってるわけでもないし、合宿は無理でしょ。なら練習試合じゃないかなって、理詰めで』

けろり…。と、さも当然に導き出した、と言わんばかりのメールに、俺は脱力した。

「真ちゃんどったの?肩落としちゃって」

「何でもない」

「あ、分かった。千尋ちゃんでしょ!デートのお誘い断られちゃったり?」

にしし、と笑う高尾。…あいにくだが、逆なのだよ。そして、こまっているのだよ。
千尋のことが発覚して以来、高尾ににやにやされてからかわれる率が高くなった。

「違う」

「じゃあなんなのだよ。困ったときは友達100人できるかな、をリアル達成している高尾ちゃんにお任せ♪」

プルルル…。

「!」

高尾の冗談と言えない冗談と一緒に電話が鳴りだす。千尋がしびれを切らしたらしい。短気は損気なのだよ。
『奥村千尋』と表示された画面に、ひょい…、と通話ボタンを押したのは、高尾だった。

「たかっ…」

『もしもーし、こんにちは。千尋サン?俺は高尾和成、真ちゃんのバスケの仲間でーっす!よろしくー。
え、真ちゃんですか?目の前で、電話に出るか出ないかうじうじしてたんで、分捕っちゃいましたーアッハー。
そうっすよねぇ、真ちゃんて妙に融通効かないところがあるというか、ぶっちゃけガンコな変人でぇ…。俺も結構手を焼いてるんですよー。
え、千尋サンも身に覚えがあるんですかー?じゃあ、真ちゃんのガンコは筋金入りなんスかねー。
え?ああ。今日の試合は秀徳で、6時からっすよー。相手は正邦っていうディフェンス堅いトコでー。やれやれってカンジっすわー。
あ、ありがとうございますー。
千尋サンに応援されたら、和成君頑張っちゃうぞー、ってね。
あはは、よく言われますー。コミュ力高いよねーって。
6時っすよー。試合?あー、多分カントクに言えば大丈夫じゃないかなーとか思うんですけど。
最悪、真ちゃんの三回ワガママ使ってもいいんでー。
そうなんすよ。エース様のワガママが一日三回許されちゃってるんですよー。ホント振り回されちゃってるというかー。
あはは、そうしてください。千尋サンの言うことなら真ちゃん聞くと思うんでー。
え?マジすか?うわぁ、嬉しい。
ああ、そうっすねー。ええ、はい。あ、そーゆー手続きみたいなのは俺やっとくんで気にしないでくださいよー。
あはは、ハイスペックな彼氏だねってよく言われます。
…いや、それは真ちゃんに睨み殺されちゃうんで勘弁で。あは、冗談きついっすわー。そうっすねぇ、じゃああとで待ってまーす!』

プツ…。

「ずいぶん盛り上がっていたようだが何を話したのだよ」

「真ちゃん、顔怖い。マジでめっちゃ怖いから離れて」

ほい、とりあえず返すわ。と渡された携帯を厳重にしまって、勝手に通話して勝手に切ったバカ高尾を見る。

「千尋ちゃんさん、今日の試合来るってさー。良かったじゃん、真ちゃん?」

「……、なんだと…?」

「何か元々秀徳に用事があったみたいなんだけど、どうせならってことで試合も見たいって。てことで、カントクにお願いしておいて、言えば分ってくれると思うからって頼まれちったー−……んだけど、真ちゃん、大丈夫?」

フリーズした真太郎に、はたはた、と手を振る高尾。

「……爪のケアを念入りにするのだよ」

「あ、そっちね。…イイトコ魅せちゃおうってことね」

真ちゃん、可愛いわ。ツンデレもいいとこじゃん。と笑い転げる彼。
てっきり部外者は来るな!高尾も何で止めないのだよ!とか言われるかと思ってたのに。

(冗談でも、高尾君みたいなコミュ力高いハイスペック彼氏が欲しいなーって言われたことは伏せておかなきゃやべーわ。真ちゃんの目がマジだし…)

『真ちゃん…真太郎君のバスケ、生で見るのは初めてなの。いつもはDVDとかでね。見に行きたいんだけど、いいかな?
高尾君、真ちゃんの相棒さんなんでしょ?
ツンデレでいつも悪く言ってるかもしれないけど、本心じゃそんなこと思ってないの。二人のコンビネーション…。秀徳のバスケが見たい。
中谷先生には私が来ますって言ったら分かってもらえると思うから、頼んでもいいかな?
あと、外来の手続きがあると思うんだけど…用紙とか…ね、手続きめんどくさいんだよねぇ』

(俺が聞いた感じじゃ…千尋サンも、真ちゃんに脈ありな気がするんだけど…)

それに、千尋サン秀徳OG?……にしては、距離感が変だ。

(まさか、ね…)

今はいないけど、バスケ部の元マネージャーとかだったりして。まっさかー。
いや、マジでありえるかも。



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